8日の東京株式市場でヤフーや楽天など電子商取引(EC)大手の株価が急落した。前日にヤフーがネット通販サイトの出店料を無料にすると発表。価格競争が本格化し、事業の収益性が低下しかねないとの懸念が広がった。EC市場は拡大が続いているが、サイトの運営各社が「利益なき繁忙」に陥るリスクを市場は警戒し始めた。
楽天株は朝方から売り注文が殺到し、一時270円(20%)安となった。ヤフー株と、ブランド品のネット通販を手掛けるスタートトゥデイ株も6%安で引けた。
ヤフーはネット通販事業で楽天や米アマゾン・ドット・コムに立ち遅れている。無料化で出店数を増やして客の利用を促し、広告収入を拡大する戦略だ。
ただ、当面は利益の圧迫要因となる。2014年3月期は営業利益を最大で90億円下押しする見通し。「15年3月期も営業利益は1ケタ台の伸びにとどまる」(宮坂学社長)という。
迎え撃つ楽天も「値下げで対抗し消耗戦を繰り広げるのでは」(国内証券)との不安が市場で広がった。仮想商店街「楽天市場」の13年1~6月期のセグメント利益は352億円と全体の約7割を占めた。出店料や販売手数料はその柱だ。
ただ、楽天は現時点では静観の構え。「ヤフーに出店する店舗が出る恐れはあるが、販売支援などを手厚くすることで店舗をつなぎとめられる」(同社幹部)とみる。
国内小売り・サービス市場に占めるネット通販の比率は、まだ3%程度と小さい。「ヤフーが無料化モデルを打ち出したことで市場が活性化する」(バークレイズ証券の米島慶一アナリスト)と期待する声もある。
8日の株式市場では恩恵が及びそうな銘柄が物色された。ヤマトホールディングス株は終値で3%上昇。13年4~6月期の「宅急便」取扱個数は前年同期比11%増えたが、増加分の約8割をネット通販などが占める。取扱個数の拡大を期待した買いが入ったようだ。
通販サイトに表示する広告の価値が高まるとの見方も出た。ネット広告ではサイバーエージェント株が3%高、セプテーニ・ホールディングス株が4%高で引けた。
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