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在外被爆者―救済に国境などない

被爆者救済のあり方が問われた裁判で、国側がまた負けた。被爆者援護法により、国内の被爆者は治療を受けた場合、自己負担した医療費が原則、全額返ってくる。だが、海外に住む被爆[記事全文]

無形文化遺産―和食の真価は何か

和食が世界のWASHOKUになる。日本の「食」文化の真価とは何だろうか。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の事前審査で、無形文化遺産への登録が勧告された。[記事全文]

在外被爆者―救済に国境などない

 被爆者救済のあり方が問われた裁判で、国側がまた負けた。

 被爆者援護法により、国内の被爆者は治療を受けた場合、自己負担した医療費が原則、全額返ってくる。だが、海外に住む被爆者には適用されない。

 在外の場合、代わりに医療費助成制度があるが、年18万円程度までという上限がある。

 「これは差別」と韓国人被爆者が起こした裁判で、大阪地裁はきのう、国の方針に沿って医療費支給を拒んだ大阪府の措置は違法だ、と判決した。法律上、在外被爆者への支給を制限できる根拠はないとした。

 外国人でも被爆者健康手帳がとれる道を開いた70年代の訴訟以来、在外被爆者の裁判で国側は敗北を重ねてきた。行政訴訟として極めて異例だ。なぜか。

 援護法は、原爆放射線の影響に生涯苦しむ被爆者を援護するのは国の責任とうたう。「どこにいても被爆者は被爆者」が基本原則である。だが国は法の運用でこれを徹底してこなかった。そこに問題の本質がある。

 広島、長崎では、日本国民とされた朝鮮半島出身者が、推定で数万人、被爆した。現在4500人いる在外被爆者のうち3千人が韓国在住だ。海外に渡った日本人被爆者も少なくない。

 57年に制定された旧原爆医療法以来、国籍や居住国で援護に差をつける条項は法律にない。だが国は、在外被爆者に対しては通達や法解釈で救済の幅を狭めてきた。裁判で違法と指摘されると、部分的に制度を改める小手先の対応を繰り返した。

 被爆者の老いは進む。国が法廷で争い続けるのは、時間かせぎとの批判も受けよう。基本原則に立ち返り、制度を改めるべきである。

 韓国人被爆者たちは今年8月、日本政府に個人賠償を求める権利があることを確認するため、韓国で集団提訴した。

 これに対し日本政府は65年の日韓協定で、個人賠償は「解決済み」との立場だ。韓国の被爆者には援護法に基づく手当を支給しているほか、91〜92年度に「人道支援」として計40億円を拠出している。

 日本側には「どこまで賠償を求めるのか」との声もあるが、被爆者たちの根底にあるのは、公平な対応をしてこなかった日本政府の姿勢への疑問である。

 国によって医療保険制度が異なる事情はあるが、支給対象を自己負担分に限れば、極端な額にならないのではないか。要は、在外被爆者が「差別」と感じない策を実現することだ。国は被爆者団体、そして韓国政府とも協議していくべきだ。

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無形文化遺産―和食の真価は何か

 和食が世界のWASHOKUになる。日本の「食」文化の真価とは何だろうか。

 ユネスコ(国連教育科学文化機関)の事前審査で、無形文化遺産への登録が勧告された。

 富士山が記憶に新しい世界遺産は遺跡や自然を選ぶ一方で、無形文化遺産は芸能や工芸、社会慣習などを対象とする。

 その前身だった「傑作宣言」の時に日本からは能楽や人形浄瑠璃文楽、歌舞伎が選ばれた。09年に無形文化遺産に変わり、日本の21件が登録されている。

 これまではすべて日本国内で指定された重要無形文化財と重要無形民俗文化財だ。その点で和食は異例の推薦だった。

 世界遺産と違って、無形文化遺産には「顕著な普遍的価値」は求められない。重視されるのは、その文化を支えるコミュニティー(共同体)である。

 ユネスコへの提案書は、和食を支える共同体を「すべての日本人」と広くとらえた。だが、食文化の伝承を意識する日本人はそう多くない。

 和食を無形文化遺産に、という運動はもともと京都の日本料理業界から始まったとされる。世界遺産が観光資源となっている現状で、経済的な思惑がなかったとはいえないだろう。

 だが、この運動に農林水産省が加わってから、会席など高級料理ではなく、日常的な「一汁三菜」を基本とする提案に転じた。韓国の宮廷料理が見送られたことが動機の一つとされる。

 提案書は、「自然の尊重」の精神のもと、できるだけ食材の持ち味を生かす工夫に特徴があると説明。そのうえで健康・長寿や肥満の防止に役立つことを強調している。

 保護策の柱としては「食育基本法」を挙げる。都市と農村の共生、消費者と生産者の信頼、環境と調和のとれた食料の生産などをうたっている。

 こうしてみれば世界と共有すべき和食の価値とは、安全と健康にこそあるといえるだろう。実際、多くの日本人が心がけ、支える食文化はそこにある。

 ただ、食品をめぐる問題は今もあとを絶たない。何も輸入品のせいだけではない。生産地や食材、消費期限、調理法など国内の偽装が相次いでいる。

 「人と自然との融合のもとに食事を摂(と)る」と提案書に表現された食の光景が、私たちの暮らしにどれほどあるだろう。

 農村の再生や環境の保全など「食」を守る社会づくりは、そもそも今の日本が息長く取り組むべき目標なのだ。WASHOKUの登録は、その誓いを再確認する契機と考えたい。

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