在外被爆者:医療費支給…大阪地裁「援護法、適用される」

毎日新聞 2013年10月24日 21時58分(最終更新 10月25日 01時28分)

 海外に住んでいることを理由に、被爆者援護法に基づく医療費の支給申請を却下した大阪府の処分は違法として、韓国に住む韓国人被爆者ら3人が処分の取り消しを求めた訴訟の判決が24日、大阪地裁であった。田中健治裁判長は「援護法の医療費支給の規定は特段の事情がない限り、在外被爆者にも適用されると解釈すべきだ」と述べ、却下処分を取り消した。国と府への計330万円の国家賠償の請求は棄却した。

 ◇初の司法判断

 在外被爆者の医療費支給を巡っては、広島、長崎でも同種の訴訟が起こされているが、支給を認める初めての司法判断となった。

 訴訟を起こしたのは広島で被爆した李洪鉉(イ・ホンヒョン)さん(67)ら男性2人と男性被爆者の遺族。原告の被爆者1人は提訴後に死亡し、遺族が訴訟を承継した。

 3人は終戦後に韓国に帰国し、1980年代以降、被爆者健康手帳を交付された。2006〜10年の間、肝がんや腎臓病のため韓国で治療を受け、自己負担分の計約150万円(現在のレートで計算)の支給を11年1月、府に申請。しかし、同年3月、海外での医療費という理由で却下された。

 国は援護法18条の規定に基づき、国内の被爆者には医療費の自己負担分を全額支給する。在外被爆者が日本で治療を受けた場合も全額支給され、渡航費も補助している。しかし、海外で治療を受けた場合は「国ごとに医療制度が異なる」ため支給対象外となり、同法とは別の事業に基づき約18万〜19万円を上限に助成している。

 訴訟では、海外の被爆者も国内の被爆者と同様、自分の国で治療を受けても援護法の18条が適用されるかどうかが争点となった。

 判決はまず、援護法について「原爆投下の放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊なもので、戦争遂行の主体だった国が自らの責任で救済を図るという国家補償の性格を有する」と指摘した。

 そして、18条の規定を国内の被爆者に限定して適用するという解釈は、その理由が合理的と認められる場合に限られるとした。

 その上で、在外被爆者が自国で医療を受けることについて「日本に渡航して医療を受けるのが容易で、合理的であるなどの特段の事情がない限り、18条の『緊急その他やむを得ない理由』に当たる」との判断を示し、府の却下処分を違法と結論付けた。国家賠償については「尽くすべき注意義務を果たさなかったとは言えない」として退けた。【内田幸一】

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