【佐藤達弥】安倍内閣は25日にも特定秘密保護法案を閣議決定し、国会に提出する。専門家が懸念するものの一つが「独立教唆」の規定だ。たとえ相手が秘密を明かさなくても、聞き出そうとしただけで処罰される――。市民活動に影響を及ぼすケースを想定し、大阪弁護士会の畠田健治弁護士と問題点を考える。

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 〈独立教唆〉 そそのかし(教唆)を受けた公務員らが実際には情報を漏らしていなくても、そそのかした方が罪に問われるという法理。特定秘密保護法案の24条は「(特定秘密漏洩)行為の遂行を共謀し、教唆し、または扇動した者は、5年以下の懲役に処する」と規定している。これに対し、通常の教唆罪は刑法61条で「人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する」と定められ、犯罪の実行があって初めて成立する。

■想定されるケース―核燃料輸送ルート尋ねて逮捕

 原発が再稼働した原発立地県。ある夜、核燃料を積んだ車両が走り去った。沿道には市民団体のメンバーらの姿があった。燃料の積み方は安全か、トラブルを起こさないかなどを監視するためだ。

 輸送ルートは非公開。メンバーらは自治体職員らにひそかに接触し、ルートを割り出していた。

 昼下がり。メンバーのAさんはある町の職員と喫茶店で向き合った。

 「次のルートはどこ?」

 「原発に関わる情報が特定秘密に指定された。話すとまずい」

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