登録 : 2013.10.24 00:51 修正 : 2013.10.24 08:11

社会元老・知識人たち 苦言
"民主主義を揺さぶる国家犯罪
‘大きな問題はない’与党態度 危険
朴大統領が解決法を模索すべき"

‘大韓民国憲法’は第66条で大統領に 「憲法を守護する責務」 を付与している。 大統領当選者は憲法第69条に明記されている「私は憲法を遵守し 国家を保衛し 祖国の平和的統一と国民の自由と福利の増進および民族文化の暢達に努力して大統領としての職責を誠実に遂行することを国民の前に厳粛に宣誓する」 という就任宣誓文を国民の前で読んでこそはじめて大統領になる。 朴槿恵(パク・クネ)大統領が去る2月25日、ソウル汝矣島(ヨイド)の国会で開かれた第18代大統領就任式で就任宣誓をしている。 イ・ジョンウ先任記者 woo@hani.co.kr

 国家情報院と国軍サイバー司令部などの国家機関が18代大統領選挙に全方向的に介入した事実と情況が明らかになっているが、大統領府と与党では真剣な反省と省察どころか‘何が問題か’という態度を見せている。 これに対して韓国社会が1987年以後に確保した最小限の手順を踏んだ民主主義と憲法的価値が毀損されていく兆候だという指摘が出ている。

 23日<ハンギョレ>がインタビューした社会元老と知識人たちは、情報機関と軍の政治的中立などのような民主主義の核心価値まで過去に退行させ始め、4・19革命、5・18民主化運動、6月民主抗争など多くの人々の血と汗で作ってきた民主主義が崩れ落ち始めているという憂慮を示した。 朴槿恵(パク・クネ)大統領と政府・与党が関連疑惑を認めて謝る一方、一日も早く解決法の摸索に乗り出さなければならないという注文も相次いだ。

■ "民主主義を揺さぶる国家犯罪"

 国家情報院・サイバー司令部などの選挙・政治介入に対して多くの知識人は韓国の民主主義が権力者と国家機関によって蹂りんされた事件と異口同音に答えた。 ‘国家犯罪’という強烈な批判も少なくなかった。

 アン・ビョンウク カトリック大名誉教授は 「国家機関が立ち上がり組織的に選挙に介入したことは民主主義を否定し大韓民国の歴史を否認する行為」と指摘した。 アン教授はその理由として‘代議民主主義’が毀損された点を挙げた。 国民が選んだ代表が国民の意思を代弁する代議制民主主義が正しく作動するには、選出過程である選挙が公正でなければならず、先の大統領選挙では情報機関が莫大な組織力と情報力を利用して世論操作に乗り出したという理由からだ。

 国家情報院と軍サイバー司令部は大統領選挙介入ではなく北韓と従北勢力に対する対応だと主張しているが、国家情報院とサイバー司令部要員は事実上互いに連係してインターネットと社会関係網サービス(SNS)等で朴槿恵(パク・クネ)大統領候補を支持・称賛し、文在寅(ムン・ジェイン)・安哲秀(アン・チョルス)など野党圏候補らを蔑視・誹謗する数万件の文を流布したことが明らかになっている。

 これに対して、チョン・サンジン西江(ソガン)大教授(社会学)は‘民主主義を傷つける国家犯罪’と説明した。 チョン教授は「選挙は政治的見解や主張、政策を異にする政党どうしのいわゆる政派闘争だが、政派を超越しなければならない国家がその争いに介入することは民主主義の根幹を揺るがす犯罪行為だ」と話した。 チョ・デヨプ高麗(コリョ)大教授(社会学)も 「今回の事件は市民の歴史を否定して民主主義の歴史を根こそぎ破壊する行為であり、大統領選挙自体の正当性問題をはじめ大統領選挙で作られた現政権の正当性と正統性までが疑いを受ける余地があるとみられる」と指摘した。

■ "憲政意識があるのか"

 国家情報院など国家機関が主導した大統領選挙世論操作および政治介入は、憲法精神を傷つけたという批判も強く提起されている。 ‘大韓民国は民主共和国で、大韓民国のすべての権力は国民に由来する’という国民主権の精神を無視したという理由からだ。 イ・ホジュン西江(ソガン)大法学専門大学院教授は 「選挙の勝敗にどんな影響を与えたかと関係なく、市民の票を一定方向に誘導する方式で国家機関が選挙に介入したことは憲法を蹂躪する行為であり反民主的行為だ。 過去の金権・官権選挙と変わりない」と話した。

 憲政史を見れば、1960年3・15不正選挙と4・19革命後になされた3次改憲を通じて公務員の政治的中立は憲法的価値になった。 以後、数回の憲法改正を経ながらもこの条項は命脈を維持し民主主義の核心要素に位置した。 ハン・サンヒ建国(コングク)大法学専門大学院教授は「公務員が選挙に動員されることを防ぐために、わが国の憲法と公務員法には‘政治的中立義務’を置いた。 国家情報院の選挙介入は憲法に背くだけでなく、民主主義の最も基本的な原則にももとることだ」と話した。

 したがって不法選挙介入をした勢力は、憲法精神を守ろうとする意識すらなかったという指摘が出ている。 チェ・ヨンジン中央(チュンアン)大教授(政治学)は「国家機関が政治に関与したことは不法を越えて違憲だ。 自分にとって利益になれば、国家機関動員でも何でもできるという態度は、彼らに憲政意識がないということを証明している」と話した。 パク・ギョンシン高麗(コリョ)大法学専門大学院教授は「国民主権の原理は国民と国家の同一性を意味するが、国家情報院が選挙に介入したことは国民主権を遮る行為であり、国民の思想の自由をかく乱する違憲的な公権力行使だ」と説明した。

"選挙に及ぼした影響と関係なく
国家機関による介入自体が問題"
国家機関が大統領選挙世論に介入し
国民を巧妙に洗脳し
選挙自体も公正でないならば
民主主義は維持できず
現政権の正当性も動揺する

 情報機関を中心になされた大統領選挙介入事件は、過去の不正選挙から進化した‘デジタル時代の不正選挙’に該当するという批判も出ている。 ハン・サンヒ教授は「国民のコミュニケーション過程に国家が深々と介入し持続的な洗脳作用を通じて国民の考え自体を変えようとしたことは、その様相や深刻性次元で過去の不正選挙と大きく異ならない」と語った。 イ・ホジュン教授は「選挙で朴槿恵(パク・クネ)候補を当選させるために政権次元であらゆる違法と不法を動員したのであり、政治的に見れば選挙の公正性と正当性を傷つけた」と批判した。

■ "大統領の義務を考えなさい"

 国家情報院などの大統領選挙介入は李明博政府の時に起きたことだけに朴槿恵(パク・クネ)政府とは関係なく、110万票差の大統領選挙結果には大きな影響を及ぼさなかったという大統領府とセヌリ党の主張に対して、多くの知識人たちは説得力がないと明らかにした。 選挙に及ぼした影響より国家機関が特定候補に有利なように介入したこと自体が深刻だということだ。

 イ・サンドン中央(チュンアン)大名誉教授は「大統領選挙の結果にどんな影響を及ぼしたのかが重要なのではない。 選挙に国家情報院が不法に介入したこと自体が不法で、これに対して厳正に捜査し関連者を処罰すれば良い。 これを何度も揉み消そうとしていることが問題になっている。 政治的解決法とは、司法的に厳正に処理することから始まることだ」と話した。

 キム・ミヌン聖公会(ソンゴンフェ)大社会科学政策大学院教授も「効果がどれくらいあったかと関係なく、そのような選挙介入が大韓民国の民主社会にいかなる危険を持たらしたかを見なければならない。 ‘朴槿恵(パク・クネ)当選、文在寅(ムン・ジェイン)落選’のために選挙介入がなされただけに、朴槿恵大統領と政府の責任を問わざるをえない。 そういう不法選挙の受恵者が朴大統領だということも否めない事実だ」と話した。

 専門家たちは今回の事態を解決するためには沈黙で一貫している朴槿恵大統領が直接立場を明らかにし、問題解決に乗り出さなければならないと要求した。 たとえ朴大統領が直接的に責任を負うことがなくとも、古い法秩序と民主主義を守護しなければならない大統領の義務に則り問題解決に乗り出さなければならないということだ。

 カン・ウォンテク ソウル大教授(政治学)は「朴大統領が直接指示したのではなく、当時 朴槿恵候補キャンプが組織的に介入したということが証明されていないと言っても、憲法を守護しなければならない国家最高責任者として今回の事態に対して最小限の遺憾表明と再発防止のための制度準備の約束はしなければならない」と話した。

 ハン・スンホン弁護士は「国家機関の大統領選挙介入に対して応分の措置を取り、再発を防止する側に民意を集めることが現時点では重要だ。 朴大統領が沈黙で一貫しているのは問題解決に役立たない」と話した。 キム・ギョンウク、パク・スンホン、キム・ヒョジン記者 dash@hani.co.kr

韓国語原文入力:2013/10/23 23:06
http://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/608346.html 訳J.S(3816字)

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