生臭い、小骨がいやだ――。
そんな理由で、日本の魚の消費量が減っている。水産庁によれば、その量はこの10年間でおよそ2割減!
加えて、福島第一原発事故による海洋への放射性物質流出で、「日本の魚はやばい」というイメージが世界に広まってしまった。まさに日本漁業の危機だ。
だが、そんな窮状を救う救世主が現れた。それは「フルーツ魚」。身にほんのり、ゆずやみかんなどの香りがつき、食べるとその風味が口中に広がるのだ。
ざっとそのブランド名を挙げてみよう。「かぼすブリ」(大分県)、「みかん鯛(たい)」(愛媛県)、「すだちぶり」(徳島県)、「レモンはまち」(広島県)などだ。
そうしたフルーツ魚のひとつ、「オリーブハマチ」を養殖する香川県かん水養殖漁業協同組合の嶋野勝路(しまの・かつじ)組合長はこう語る。
「養殖を始めた2008年はわずか1万尾の出荷にすぎませんでした。それがおいしいと評判を呼び、昨年は21万尾に。今年は25万尾超えを目指しています」
早速、週プレもオリーブハマチを試食してみた。すると、ハマチ独特の臭みがまったくしない。後味もさっぱりして、ウーロン茶を飲んだ後のように脂分が口中に残らない。こんなハマチ、初めてだ。これなら魚が苦手な人だって、きっとやみつきになるはずだ。
それにしても、なぜフルーツ魚なんてものが生まれたのか?
日本で初めて「ゆずぶり」(高知県)の研究を手がけた高知大学農学部の深田陽久(はるひさ)准教授に聞いた。
「高知のオリジナルブランド魚をつくろうということで始めました。当時、養殖魚のエサにポリフェノールなど抗酸化作用のあるものを入れることがはやっていて、それならと同じ効果を持つ高知特産のゆずをエサに交ぜてみたんです」