柏崎刈羽審査延期:揺らぐ東電シナリオ 再建計画にも影響
毎日新聞 2013年10月23日 20時20分
原子力規制委員会による東京電力柏崎刈羽原発6、7号機の安全審査の開始が当面見送られる見通しになり、東電が描く来春の再稼働シナリオが揺らぎ始めた。金融機関からの融資の前提となる、新しい総合特別事業計画(再建計画)の策定にも遅れが出かねない。
東電は9月27日に規制委に安全審査を申請。審査が半年程度かかるとされることを受け、取引先金融機関に示す新たな計画では、柏崎刈羽の再稼働時期を「来年4月」に設定する構えだった。「審査に迅速に対応し、新潟県の理解を得る努力を続け、できるだけ早期の再稼働につなげる」(東電幹部)シナリオだったが、福島第1原発で汚染水漏れが相次いで発生。規制委は「まず福島第1の状況を見極める」(田中俊一委員長)と対策徹底を強く求めており、柏崎刈羽の審査開始は、事実上「棚上げ」の状態だ。
東電にとって、再稼働に向けた入り口に過ぎない審査さえ始まらない状況が続けば、再稼働がそれだけ遠ざかる。12月に予定される3000億円の新規融資について、各金融機関は前向きに検討しているが、「その時点で審査入りしていないと、融資がやや不安になる」(大手行幹部)。東電のある幹部は「審査の途中でもめることは想定していたが、審査を始めてもらえないのは想定外」と話す。
東電は15日、規制委に「汚染水対策と柏崎刈羽の安全管理を両立できる」とする報告書を提出。「柏崎刈羽から人材を回すべきだ」との指摘を受け、20人を汚染水対策に派遣することも決めたが、規制委は「不十分」とするなど見解の隔たりは大きい。
規制委は、田中委員長が東電の広瀬直己社長から直接説明を聞いた上で、審査開始時期を決める考えだ。汚染水対策と柏崎刈羽審査の両立ができるのか、規制委の納得を得られる説明をできるかが、大きな鍵となりそうだ。【浜中慎哉】