原発:課題山積みも方針転換 建て替え容認で反発必至
2013年10月24日
政府・自民党が原発の建て替えを容認する方向となり、民主党政権時代の「原発ゼロ」方針からの転換が具体的に動き始めた。一方、東京電力福島第1原発の汚染水問題だけでなく、使用済み核燃料の最終処分場探しなど、原発の抱える課題は山積したまま。建て替えよりも急ぐべきことがあるのではないか、との批判が相次ぎそうだ。
福島第1原発事故後の2012年6月に成立した改正原子炉等規制法は、原発の運転期間を原則40年間とするルールを定めている。経済産業省の試算では、新たな場所に原発を造る「新設」、既存発電所で原子炉を増やす「増設」、古い原子炉を廃炉する代わりに新しい炉を造る「建て替え」のいずれも行わない場合、2049年に国内の原発はゼロになる。「再生可能エネルギーがどこまで伸びるか見通せない中、原発ゼロになれば、将来、電力不足に追い込まれる」(経産省幹部)という危機感が、政府・自民党による建て替え検討の背景にある。原発建設の決定から運転開始までに10年以上かかることも、建て替えの議論を始めるべきだとの動きにつながった。
さらに、原発が「将来ゼロ」と見られてしまっては、立地自治体から「政府方針があやふやな状況だと、(住民の理解を得られにくく)極めて迷惑」(西川一誠・福井県知事)などの不満の声が高まり、再稼働にも悪影響を及ぼしかねない。
だが、原発への世論は依然厳しい。毎日新聞の世論調査(7月末)では、原発再稼働への「賛成」36%に対し「反対」は56%。小泉純一郎元首相が脱原発を支持したことを追い風に、自民党内でも「原発ゼロの道を必死になって模索すべきだ」(中堅議員)との声が上がっている。安倍晋三首相は「建て替え」路線を突き進むのか。世論の反発が予想される中、政府・与党の議論が曲折する可能性は残る。【大久保渉、小山由宇】