伊豆大島土石流:翌日に備え役場無人…都「態勢整備」
2013年10月23日
15日夕の土砂災害警戒情報の流れ
台風26号に伴う土石流で甚大な被害が出た東京都大島町(伊豆大島)で、町が避難勧告などを出す際の参考とする「土砂災害警戒情報」が放置されていた問題で、川島理史(まさふみ)町長が15日夕、災害発生時の司令塔となる町総務課が約8時間無人となる状態を了承していたことが分かった。都も警戒情報発表後の同日夜の時点で「無人状態」を把握しながら、町に何の指示も出さずに放置していた。複合的な判断ミスが被害を拡大させていた可能性が浮かんだ。
「台風が接近しているので、16日午前2時に第1次非常配備態勢を敷き、職員を招集します」
町幹部によると、総務課長が島根県に出張していた川島町長に電話し、職員をいったん帰宅させることを伝えたのは15日午後4時7分のことだ。川島町長は「そうだね」と了承したという。
大島町では以前から深夜や未明に台風襲来の可能性がある場合、早めに職員を帰宅させ、気象状況に合わせて再登庁させるのが慣例になっていた。「(170人程度の)全職員の疲労を最小限に抑え、災害対応と通常業務にあたらせるための措置」で、午後6時半までに全員が帰宅した。このため、総務課長が16日午前0時ごろにいち早く再登庁するまでの約5時間半、町が委託し、地下1階に詰める警備員1人が都などからの連絡を処理していた。
都もこうした町庁舎の状況を把握していた。都は15日午後5時38分に大島町を対象とする大雨警報が発令されたことを受け、同5時51分に町の警戒態勢を確認するファクスを送信。1時間以上たっても返答がないため、町に電話をかけたが連絡が取れなかった。都からの依頼を受けた都大島支庁の職員が確認作業を続けたところ、警備員が「職員は早く帰った。明日の午前1時半に態勢を取ると聞いた」と答えたため、同7時25分、この情報を都に伝えた。
都はこの情報を基に警戒の態勢が取れたと判断。都総合防災部のホワイトボードに書き込んだが、同6時5分の時点で別途ファクスしていた土砂災害警戒情報を町が把握しているかどうかは確認しなかった。
都防災対策課は「町は警戒情報をもとに態勢を整えたと考えてしまった」と説明するが、警戒情報を町が把握したのは、電話の約4時間半後に総務課長が再登庁してからだった。
また、警戒情報などを伝えるファクスには、自治体側に「良」「不良」のボタンがあり、受信状況を都に伝える仕組みになっていたが、職員が少ない自治体からは返信がない場合もあり今回の大島町に対しても都側から確認の連絡をすることはなかった。【加藤隆寛、川口裕之】