記者の目:在特会ヘイトスピーチ違法判決=小泉大士

毎日新聞 2013年10月24日 00時15分

 では、どうすればいいだろうか。できれば現場に足を運び、多くの人にデモの実態を知ってもらいたい。新大久保では大勢が「殺せ、殺せ、朝鮮人」「新大久保を更地にしてガス室をつくるぞ」などと叫び、「良い朝鮮人も悪い朝鮮人も殺せ」と記したプラカードを掲げる人までいる。デモ参加者を上回る人々が抗議に押しかけ、機動隊を含めれば500人から1000人近い集団が路上を埋め尽くす。双方から飛び交うのは怒号と罵声。極めて異様な光景だ。

 カウンターと呼ばれる抗議側に暴力的なイメージがあるからか「どっちもどっち」という意見も聞くが、傍観したままでいいのだろうか。現実に出ている被害から目を背けてはならない。泣き叫ぶ京都の児童の背後で、数多くの人々が心を痛め、涙を流していることを知る必要がある。

 現行法では不特定多数に向けられるヘイトスピーチ自体を取り締まることはできず、今後は法規制の是非を巡る議論が活発化するだろう。この問題はこれまで「表現の自由」の観点から議論されることが多かったが、今回の判決は在特会の街宣を「悪口」に過ぎないと断じている。彼らの行為自体は、表現の自由によって守られるべき言論には値しないということだ。ただし、立法で規制した場合は当局による恣意(しい)的な運用への懸念もあり、私自身も考えが定まっていない。

 だが、表現の自由を重視するあまりに思考停止に陥っていては、ヘイトスピーチはなくならない。「表現の自由を守るためにこそヘイトスピーチを処罰すべきだ」と主張する東京造形大の前田朗教授は「対策は規制か否かの二者択一ではない」とも言う。私も同感だ。刑事罰でなくても、例えば社会的な批判や行政指導といった形で、憎悪の連鎖に歯止めをかけることだってできるはずだ。そのためには、何よりも「差別は決して許されない」という社会的な合意を形成する必要がある。見て見ぬふりをするのではなく、一人一人が差別の問題に目を向けてほしい。

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