日銀は23日公表した「金融システムリポート」で、4月からの大胆な金融緩和が金融機関にどう影響しているかを分析した。日銀が大量の国債を買う緩和策を受け、銀行は保有国債を減らし、貸し出しなどリスクの高い資産へ資金をシフトさせていると分析。緩和効果は出ているとの見方を強調した。足元の市場では銀行が「国債回帰」する兆しも見え、現実の効果には一服感もある。
「銀行では、徐々に国債などからのシフトが進んでいる」――。リポートをまとめた日銀の金融機構局はこう強調する。銀行の国債保有残高は4月以降、5カ月連続で減少。8月末は138.1兆円と3月末に比べ23.4兆円減った。
銀行の保有残高が減っているのは、日銀が緩和手段として、金融機関から大量の国債を買い入れているためだ。銀行の保有残高が減る一方で、日銀が保有する長期国債の残高は3月末の約91兆円から10月20日時点では約129兆円へ1.4倍に急増した。日銀は13年末に140兆円、14年末には190兆円へ積み増す方針だ。
日銀は大量の国債を買うことで銀行の資金を貸し出しなどにシフトさせ、実体経済に回るお金の流れを後押しする狙いがある。銀行の保有国債が減る一方で、貸し出しの平均残高は9月に前年同月比2.3%増加。東日本大震災の影響で増加傾向だった電力関連などに加え、医療・福祉業への貸し出しも伸びている、とリポートは強調した。
銀行は国債残高を減らし、保有債券の評価損など金利上昇に伴うリスクは緩和前より小さくしている。金利がすべての年限で1%上昇した場合の想定損失額は銀行と信用金庫をあわせて7.9兆円で、前回4月リポート時点の8.4兆円から減った。銀行のみでも前回の6.6兆円から6.0兆円へ減った。
一方、生命保険会社や年金など機関投資家では、銀行のような資金シフトの「大きな変化は見られていない」ともリポートは分析した。銀行による外債や投資信託といったリスク資産への投資残高も「足元は伸び悩んでいる」と指摘した。市場では米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和を縮小する時期を巡って不透明感が強まり、日銀の緩和効果が表れにくくなっている。
実際、足元では銀行が国債運用を再び積み増す動きも出てきた。23日の債券市場では長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは一時、前日比0.015%低い(価格は高い)0.600%まで低下。5月9日以来、5カ月半ぶりの水準となった。
JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは「米金融緩和の縮小開始は来年3月との見方が大勢だが、延期の可能性もある。国内では日銀の国債買い入れで需給が締まり、日米ともに債券に買いが入りやすい」と話す。銀行)。最近になって再び国債での運用を増やしている銀行の間では、日銀による国債の買い入れオペに対する期待が高い。銀行が「国債頼み」の運用から本格的に脱却するまでの道のりはなお険しそうだ。
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