中国紙釈放記事:習近平指導部のメディア統制 期待と逆行
毎日新聞 2013年10月23日 21時17分(最終更新 10月23日 22時50分)
【上海・隅俊之】昨年11月に習近平総書記(国家主席)による新指導部が発足して以降、中国メディアに対する締め付けは厳しくなっている。広東省の週刊紙、南方週末では今年1月、新年号がメディアを管理する宣伝部の介入で差し替えられたとして、記者たちが抗議を繰り広げた。中国紙記者は「当局がメディアを支配する原則は何も変わっていない」と話す。
新快報では今月、中国政府高官が不当な利益を得ているとネット上で実名告発した別の記者が、デマを流したとして逮捕された。今回の抗議記事の背景にはこうした圧力への反発もあるとみられるが、中国紙記者は「党批判が盛り上がれば、さらに圧力は強まる」と話す。
中国メディアによると、新快報の記事で批判された建機メーカー(湖南省長沙市)の幹部の父親は同省の高級人民法院(高裁)の元院長で、この幹部の妻の父親は同省の元第2書記だった。同社は各界に豊富な人脈を持つとされ、長沙市公安当局による記者の拘束の背景に圧力があるとの観測もある。
中国国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局は、中国共産党が掲げる思想を記者に徹底させるために、記者証の更新の際に試験を実施することを決めた。習近平指導部はメディア管理を強めることで、共産党の代弁者となるよう求めている。
言論や思想統制の動きはメディア以外にも広がっている。法治や市民の権利実現などを訴える人権活動家・許志永氏が今年8月に逮捕されたのに続き、許氏を支援してきた著名な企業家、王功権氏も公共秩序を乱した容疑で逮捕された。メディアに詳しい北京の学者は「少しずつ法治や言論の自由が進展することを期待したが、今の状況を考えると流れは逆だ」と指摘する。