台湾の修学旅行 9割が訪日 おもてなし 自治体 知恵絞る 文化や農作業…地域アピール
●「もっと情報を」九州に注文も
日本では明治時代に始まったという修学旅行が台湾の高校にもあり、行き先の9割が日本であることをご存じだろうか。台湾の教育部(文部科学省に相当)が10年ほど前に補助金制度を設けて本格化した。受け入れる日本の観光業界としては将来のリピーター客を育てる「種まき」事業で、自治体としても国際交流や地域経済への波及効果などメリットが多い。日本から自治体関係者らが大挙して台湾を訪れ地域の魅力を売り込むなど誘致合戦も熱を帯びる。
(台北・横尾誠)
台湾の修学旅行は「教育旅行」と呼ばれる。日本と違うのは、募集に応じた生徒だけが参加する点。政府の補助の条件があるので訪問先では複数の高校と交流し、農作業や文化体験を行うことが必須となっている。日程は5泊6日程度だ。
教育部が国際的な視野を育てる目的で、日本の修学旅行を参考に推進したという事情もあって、2012年の実績では参加した7057人のうち6251人の行き先が日本、残りが韓国。日本行きは東日本大震災の影響で激減した11年を除くと増加傾向が続いている。
台湾から近くて旅費が安い安全な先進国で、高校生にも人気がある国。韓国に比べ、修学旅行の歴史が長く受け入れにも理解がある、というのが強みだという。
今年も台湾に約450あるという高校のうち、185校ほどで、およそ7800人が訪日する予定だ。
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「うちは東京に行くにも便利」「田舎の農家の暮らしを体験できます」-。9月下旬、台北市内のホテルであった訪日教育旅行現地説明会。日本からは北海道から沖縄までの自治体や観光関係者約120人が訪台、地元の学校関係者らに地域の魅力をアピールした。
日本政府観光局(JNTO)が04年から毎年企画している会だが今年の参加者は過去最多。九州からも6団体が訪台。福岡県庁から日本交流協会台北事務所(大使館に相当)に派遣されている木部匡之(まさゆき)主任は「福岡県が台湾からの教育旅行向けに新たに作成したパンフレットを使って一件でも多くの集客につなげたい」と語った。宮崎県の福留尚仁観光推進課主査は「台湾との航空定期便維持という意味でも誘致は大切」と話していた。
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まさに誘致合戦といった趣の台北の会場で目立ったのは長野県のブースの人気ぶりだった。
同県では行政の教育・観光部門と民間業者がいち早く受け入れ態勢を確立し、交流可能な学校の紹介や体験学習の情報提供・手配などが充実していることが大きいという。
親日的で富裕層・中間層が多く安定的な集客が見込めるという台湾からの教育旅行。JNTOによると、台湾側で人気の高い行き先は関東、関西に次いで九州といった具合だという。教育旅行に関する台湾の高校の組織、台湾国際教育旅行連盟の薛(せつ)光豊総会長は「九州も魅力ある街が多いけれど情報提供は不足気味。『九州はよそと何が違うのか』をもっと知りたい。長野のように3カ月前の申し込みでも受け入れ可能といった柔軟性、そして交流校のあっせんが充実しているかどうかも大きい」と話していた。
=2013/10/21付 西日本新聞朝刊=