国税調査官逮捕:OB税理士「俺は人脈がある」急成長
毎日新聞 2013年09月06日 15時11分(最終更新 09月06日 15時37分)
大阪国税局の調査官が脱税に関与したとされる事件で、逮捕された国税局OB税理士は「税務調査に強い」という触れ込みで、1000の顧客を抱える人気税理士に上り詰めた。ただ、急成長の影で、国税職員との黒いうわさも絶えなかった。大阪地検特捜部による癒着の実態解明が進む。【堀江拓哉、林田七恵、原田啓之】
「俺は国税に人脈がある。税務調査に入られることはない」
2006年末、知人を介して会ったホストクラブ経営者(37)に、OB税理士の細名高司(たかし)容疑者(61)=法人税法違反の疑いで逮捕=は豪語した。経営者は細名容疑者を顧問税理士にした。
脱税で起訴された経営者の7月の公判で検察側が明らかにした。
細名容疑者が営む「税理士法人ナイスアシスト」はJR難波駅直結の大阪シティエアターミナル(OCAT)に事務所を構える。10年2月、経営者が脱税を依頼すると、細名容疑者は「やっとくわ」と即答した。
細名容疑者が描いた通り、経営者は売り上げを5000万円隠し、税務署に赤字を装って申告した。細名容疑者は報酬として300万円を求めたという。
ナイスアシストの設立は03年。10年もかからない間に年商は億単位に上った。力の源泉は「国税職員の人脈を悪用した脱税工作」だったのか。
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昨年5月下旬、毎日新聞大阪本社に、匿名の男性から電話があった。細名容疑者と国税職員の癒着を告発する内容だった。
「大阪国税局の内部情報が細名に漏れている。細名は調査対象の企業に情報を流し、バックマージンを取っているのではないか」
大阪・ミナミなどの繁華街で細名容疑者と国税職員の姿が何度も目撃されていた。一緒にマージャンを楽しむこともあったという。ナイスアシストに出入りする職員もいた。しかし、具体的な不正は発覚しなかった。
特捜部は今年3月、不動産会社の脱税を指南したとして、細名容疑者を法人税法違反の疑いで逮捕した。この捜査で、細名容疑者の関係先から国税局の内部資料が見つかった。国税職員との癒着を示す証拠だった。
資料の一部から、西税務署の上席国税調査官、平良(たいら)辰夫容疑者(43)が浮上した。特捜部は先月28日、細名容疑者と共に別のホストクラブ運営会社の脱税に関与した疑いで逮捕した。
「退職後に顧問先を紹介してもらえる可能性もある。細名容疑者に自ら近付く職員もいた」。細名容疑者を知る関係者は証言する。