The Economist

日本の報道の自由:秘密と嘘

2013.10.23(水)  The Economist

 産経新聞の編集局次長、五嶋清氏は、これは、必要とされるよりはるかに多くの情報を政府が隠しておけることを意味すると話している。国民は従来よりも情報へのアクセスが減り、政府の透明性向上を図る近年のキャンペーンをある程度覆すことになる。

メディアなどが恐れるリスク

 例えば外交分野では、首脳会議の内容や成果が厳重に秘密扱いとなるかもしれない。著名なテレビタレント、藤原紀香氏は、2011年の福島第一原発のメルトダウンで発生した放射能に関する情報が、新法の下で取り扱い禁止と定められる可能性があると警告した。安倍首相の顧問の1人は、そのような可能性を否定している。

 五嶋氏によれば、もう1つのリスクは、公務員や政治家が報道機関と一切話さなくなることだという。そうなれば、記者が内部情報を流してくれる政府・官僚機構の情報源に接触できる特別なルートを持つ特権的な「記者クラブ」の現行システムが大きく変わることになる。

 上智大学の中野晃一教授は、現行制度には改革が必要だが、もう一方の極端な措置に飛びつく必要はないと述べている。

 最終法案は、国民の知る権利について明記し、報道の自由に対するコミットメントも盛り込まれると見られている。自民党の連立相手である公明党は、そうした修正を強く求めるだろう。しかし、世論は新法に反対だと見られ、このため安倍首相は連立与党が衆参両院で過半数を占めているにもかかわらず、抵抗に遭うかもしれない。

 望ましくない結果は、この法案が政府の関心を経済改革から逸らしてしまうことだ。

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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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