(英エコノミスト誌 2013年10月19日号)
秘密保護に関する厳しい新法が、突如、議論を巻き起こしている。
安倍晋三首相は秘密保護法の整備は「喫緊の課題だ」と述べている〔AFPBB News〕
「スパイ天国」というのは、1980年代にソ連国家保安委員会(KGB)のある工作員が日本を評した言葉だ。大勢に変化はないが、政治家や官僚は今、外国のスパイよりマスコミに情報を流すことの方が多い。
だが、今秋、安倍晋三首相は「アベノミクス」として知られる対策の一環として経済改革を国会で通そうとする一方で、秘密保護に関する厳しい新法を成立させることでリークを食い止めようとしている。
また安倍首相は、機密情報の中央集権化と、国家安全保障に関する意思決定の迅速化を図るため、新しい国家安全保障会議(日本版NSC)を創設する法案を通そうとしている。
秘密保護に関する新法は、政府を適切に機能させるために不可欠だと政府側は訴えている。一方、報道の自由を心配するマスコミは、非難の声を上げている。
他国と比べ情報漏洩の処罰が軽かった日本
日本は他国と比較して、情報漏洩に対する処罰がかなり軽い。守秘義務規定に違反した公務員の処罰は、現在はせいぜい懲役1年だ。それより厳しい処罰を受ける可能性があるのは自衛隊の職員だけで、防衛機密の漏洩は懲役5年、その機密情報が日米安保条約から得たものである場合は懲役10年の刑が科される。
2001年9月11日の出来事の後、他国でセキュリティー対策が強化されると、その差は広がった。米国は今年、1917年諜報活動取締法を使い、ウェブサイトのウィキリークスに情報を流した罪でブラッドリー・マニング元兵士に禁固35年の量刑を言い渡した。
日本の過去の政権も取り締まりの強化を試みたが、恐れられた戦時中の秘密主義政権の記憶が秘密保護法強化の動きを阻んだ。
同法に関する与党・自民党のタスクフォースを率いる町村信孝元外相は、日本の同盟国、特に米国は、日本に託された情報があまりにも頻繁にリークされると訴えていると言う。
この法案が可決された場合、新法はすべての公務員と高位の政治家に適用される。「特定機密」が、(国防に加えて)外交上の3つの新分野と防諜、対テロで指定される。情報漏洩に対する刑罰――ジャーナリストなど、法律違反を促した人にも適用される――は、最高10年の懲役刑となる。
それ以上の詳細は乏しいが、法案は何を秘密と呼べるのかという問題についての独立した審査や機密保持期間の明確な制限など、重要な規定を欠いていると伝えられている。