クローズアップ2013:伊豆大島土石流1週間 台風警戒、低い意識 町、未明まで反応鈍く
毎日新聞 2013年10月23日 東京朝刊
夜が明けたころ。一服つけようと役場のテラスに出たある町幹部の目に、積み上がった大量の流木が飛び込んできた。目の前で起きていることの重大さに気づいた瞬間だった。【加藤隆寛、川口裕之】
◇力点は火山・地震対策 町民向け防災手帳、台風の記載わずか
「火山が噴火し、地震が起きて津波が発生するという事態への意識が強く、台風対策は後回しだった」
そう悔やむのは、危機管理を担当していた町総務課職員だ。町の意識を端的に表しているのが、自然災害への対応をまとめた町民向けの「防災手帳」だ。台風への備えはほとんど記載されていない上、避難場所や町からの情報伝達ルートも明示されていなかった。
防災手帳は町の防災計画に基づき、2007年に作製され、全世帯に配布された。全27ページで、風水害(台風)▽火山噴火▽地震▽津波−−の四つの災害について、町の対策や町民が注意すべき事項などが記されている。
1986年の三原山噴火時の経験から、最多の10ページを割いているのが火山噴火だ。指定した一時集合場所や避難場所、町から情報がどう伝わるかなどを明記。溶岩が流れる想定区域などを色分けしたハザードマップも別途配布している。地震、津波についても同様に各4ページで記載していた。
一方、台風は気象庁資料から引用した風速と降水量別の一般的な被害想定と屋内外での対策についての3ページ。「台風が日本に接近する際の進路上に位置することが多い」としながら、避難場所や情報がどう伝わるかなどについての記載はない。今回の災害で発令されず、問題視された「避難勧告」も未記載だった。【水戸健一、安高晋】