「容疑者が『害を加える旨』を言ったかどうかがポイントです。店が通常のクレーム処理で土下座をすることはないでしょうから、表に出ていない部分で、脅迫めいたことを言ったり、わめき散らすなどの行動があって、店員は土下座せざるを得なくなったのかもしれません。そうでなければ、逮捕は行きすぎということになる」(広尾総合法律事務所・桐生貴央弁護士)
今回は、土下座させられた店員から警察に被害届が出ているが、そこにもカラクリがある。
「警察は、ネット上でこの主婦が話題になっていることに後から気づいて着手したわけですが、逮捕に持ち込むには弱いのではないかと途中で気づいた。そこで、逮捕のための免罪符として店側に被害届を出させたのです。もっとも、強要罪は親告罪ではないため、逮捕のために被害届は必ずしも必要ではないのですが」(捜査関係者)
逮捕劇は、ネット上では称賛を受けている。そればかりか、いまでも容疑者やその子どもの写真、個人情報が「もっとやれ」とばかりに暴かれ、バラ撒かれ続けている。逮捕のニュースが炎上のさらなる「燃料」になったのだ。
警察が今回の事件に味を占めると、ネットで炎上した人物を逮捕するという安易な考え方が定着するかもしれない。しかも、いまや「私設捜査機関」と化しているネットの住人たちに任せておけば、警察は裏取り捜査の手間も省ける。被害者へのアクセスも簡単なら、加害者の顔も名前も住所も、ネットですぐに公開されるからだ。
前出の北海道警OBが嘆く。
「『ネット社会に対する警告』などと称して、ネットで話題になっている人物を詰めの甘いままに逮捕して喜ぶというのは、警察の仕事としてあまりに幼稚であり、お粗末です。もっと他に取り組むべき事件があるのではないかと言いたい」
今後、警察が「強要罪」を過剰に振りかざすようなことになれば、それがいちばん怖い。
「週刊現代」2013年10月26日号より
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