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【放送芸能】在日コリアン 相次いで社会派舞台 食品偽装問題食品偽装と在日コリアンをテーマにした社会派の舞台が相次いで上演される。劇団昴(すばる)「本当のことを言ってください。」と、劇団文化座「GO【ゴー】」。誰にとっても無縁とはいえない題材で、舞台をきっかけに考えてみたい問題でもある。演出家、出演者に話を聞いた。(山岸利行) ◆劇団昴 告発めぐり揺れる人々劇団昴「本当のことを言ってください。」は、いじめ問題を取り上げた「親の顔が見たい」などで知られる畑沢聖悟の新作。創業者一族が経営する北関東にある食肉加工会社「オリエントミート」。ある時、「ビーフソーセージにポーク肉混入」の新聞記事が掲載され、経営陣は謝罪会見のリハーサルに躍起になる。誰が告発したのか? 会社の行方は? 二年前、大津市の中学生がいじめを苦に自殺した事件で、学校と教育委員会の隠蔽(いんぺい)体質が問題となった。「今回のスタート地点はそこにある」と演出の黒岩亮。それに加えて、「二〇〇七年のミートホープ事件などもあり、人の命に関わることを取り上げたかった」とも。畑沢と議論しながら「日本の社会をくりぬいた」新作が出来上がっていった。 偽装を隠そうとする経営陣に疑問を持つ営業担当の女性社員が告発に動くという展開だが、「内部告発という正論や正義が、そのまま正しい行いなのかどうかを見つめてみたい」と黒岩。舞台は想像力を喚起させるものだといい、「会社の行為は悪だが、会社が消滅した時、そこで働く従業員はどうなるのかといったことも観劇する際に想像していただけたら」。 告発に動く女性社員・北林しおりを演じる市川奈央子は「もし会社の秘密を知ってしまったら、商品を売っていいものかどうか葛藤すると思う」と話すが、「しおりには小学四年の子どもがいて、子どもを起点として行動する。子どもには危険なものは食べさせられない」と経営陣と対峙(たいじ)する。隠そうとする人間と告発しようとする人間の生々しさを伝えたいという。 × 「本当のことを言ってください。」は十九〜二十七日、東京・赤坂レッドシアター。市川のほか、小山武宏、石井ゆき、北川勝博らの出演。五千円ほか。劇団昴=(電)03・6907・9220。 ◆劇団文化座 日本人って何だろう?劇団文化座「GO【ゴー】」は、金城一紀さんの直木賞受賞作「GO」の舞台化。二〇〇一年に映画化もされている。 日本で生まれ育ちながら「在日」と呼ばれ、社会から疎外されてきた在日コリアンの青年がある時、日本人女性と出会い、二人の気持ちは次第に近づいていく。だが、青年は自分が在日であることを打ち明けられない。親友の身に不幸が起きたことがきっかけで、自分が在日であることを告白するが…。 今回の舞台を企画した劇団代表の佐々木愛は「近くて遠い国のことをもっと知りたいと思い、ぜひやりたいと思っていた」と話す。 東京・新大久保で行われていたヘイトスピーチを例に出すまでもなく、在日の人たちへの差別や偏見はなくならない。国家間もぎくしゃくしたまま。そんな日本の現状に「やりきれない気持ちがある」といい、「日本人って何だろう。私って何だろう」との思いを強くしている。 俳優として、韓国や中国の舞踊芸術などを見るにつけ、「日本人にはああいう表現はできない」と感じ、「学びたいと思う」。今回の舞台では、青年の人生をすてきに描くなかで、なぜこの子が矛盾を背負わねばならないのかも考えたいという。 差別を乗り越え、二人の男女の愛が国境を超えていく作品。「一人一人の結びつきは頼りない細い線でも、それがたくさん集まれば大きな力になっていくと思う。今回の芝居を見てくださって、差別に対する目の向け方が変わることがあれば私たちはうれしい」 × 「GO【ゴー】」は十九日〜十一月一日、東京・池袋の東京芸術劇場シアターウエスト。水村清朔(せいさく)脚本、岡安伸治演出。佐々木のほか、藤原章寛、高橋未央らの出演。五千五百円ほか。劇団文化座=(電)03・3828・2216。 PR情報
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