しかしベトナムは1992年の国交正常化に際し、旧敵国の韓国に謝罪も反省も補償も求めていない。それだけではない。ベトナムは60年以上も植民地支配したフランスに対して謝罪・反省・補償は要求していないし、フランスも何もしていない。
朴大統領や韓国世論(マスコミ)は、こうしたベトナムやフランスの姿勢にはなぜか口をつぐむ。フランスやベトナムの歴史認識を直視すれば、韓国の対日姿勢、要求がいかに特異で国際常識からはずれているかが分かる。
日本は国際的には異例の謝罪・反省・補償を繰り返しているが、韓国は日本を非難し続けている。これではもう付き合いきれない。
朴大統領のベトナム訪問から数日後の9月13日、韓国の新聞各紙は、「オランダがインドネシア支配時代の住民犠牲について謝罪・補償を発表した」とこれみよがしに報道した。インドネシア独立闘争鎮圧にからむ即決処刑事件で初めての謝罪・補償というが、韓国マスコミは「戦争犯罪を否定し賠償責任を回避する日本とは対照的だ」(東亜日報)と反日報道に仕立てている。
しかしオランダは、インドネシアを300年以上にわたって植民地支配したことについてこれまで謝罪・反省・補償など一切していない。このことにはまったく触れず、都合の悪い事実には目をつぶり、何が何でも日本非難につなげるいつもの手口なのだ。
ベトナムやインドネシアの首脳がフランスやオランダに対し「過去の被害・加害の立場は1000年経っても変わらない」などと言ったことはないし、今後も言わないだろう。経済的には韓国よりはるかに劣るベトナムやインドネシアの、この毅然として成熟した態度−歴史認識を韓国も見習ってはどうか。
文/黒田勝弘=産経新聞ソウル駐在特別記者
※SAPIO2013年11月号