こういった日本の好意にポーランドも応えてくれた。第1次世界大戦(14年〜18年)後、独立を回復したポーランドは、日本に対して、情報戦に不可欠の暗号化技術の基礎とソ連情報を提供してくれたのである。ポーランドのおかげで日本の暗号化技術は国際水準に達したといわれている。ドイツのポーランド侵攻(39年)後も、日本はポーランドの地下抵抗組織と協力関係にあり、日本は貴重な独ソ情報を得ていた。
また、阪神淡路大震災後、95年と96年の夏休みには、被災児童計60人をポーランドに無償で招待してくれた。被災児童の中から、孤児たちが優先して選ばれたというが、彼らはポーランドでシベリア孤児4人の生存者と面会している。4人は被災児たちを励まし、日本人に恩返しできたことを大いに喜んだという。
労働運動「連帯」を議長として率いてソ連の圧政から祖国を解放し、後に大統領となったワレサ氏は「ポーランドを第2の日本に!」と叫んだ。日本がこの期待に十分に応えられなかったことが残念だ。それでも、ポーランドの日本への親愛感は衰えていない。
■藤井厳喜(ふじい・げんき) 国際政治学者。1952年、東京都生まれ。早大政経学部卒業後、米ハーバード大学大学院で政治学博士課程を修了。ハーバード大学国際問題研究所・日米関係プログラム研究員などを経て帰国。テレビやラジオで活躍する一方、銀行や証券会社の顧問、明治大学などで教鞭をとる。現在、拓殖大学客員教授。近著に「米中新冷戦、どうする日本」(PHP研究所)、「アングラマネー タックスヘイブンから見た世界経済入門」(幻冬舎新書)