クローズアップ2013:衆院予算委質疑 首相、攻守使い分け
毎日新聞 2013年10月22日 東京朝刊
古川元久氏(民主党)「小泉純一郎元首相がいろんなところで脱原発の主張をしている。原発がなくてもすむ社会にしていく方向性を示すのが大事だ」
首相「私の政治の師匠は小泉元首相と森(喜朗)元首相だ。しかし政権を預かる立場として、国民生活や経済活動に支障がないようエネルギーの安定供給を進める責任がある」
野田佳彦政権当時、国家戦略担当相として「2030年代原発ゼロ」の民主党公約を推し進めた古川氏がただしたのは、原発再稼働に前向きな政府と、小泉氏との食い違いだった。「脱原発」に後ろ向きな自民党の姿勢をあぶり出す狙いもあったが、首相は意に介さず、小泉氏の主張とは明確に一線を引いてみせた。
東京電力福島第1原発で相次ぐ汚染水漏れ問題では、国と東電の役割分担も議論となった。政府は技術的難易度の高い分野には国費を投入する方針だが、基準や役割分担があいまいなままだからだ。
質問に立った民主党の玉木雄一郎氏は1979年に起きた米スリーマイル島原発の事故処理を巡り、米政府が国や州、電力事業者との役割分担を明確にしたことを例に挙げ、国と事業者の費用分担を求めた。首相は「東電の社員であるというプライドを持って対応することも大切だ」と語り、あくまで東電側が担うべきだとの考えを重ねて示した。
自民党の塩崎恭久政調会長代理も東電を分社化し、国などの共同出資で廃炉や汚染水処理を担う機構の設立を提案した。しかし、茂木敏充経済産業相は「詳細な検討が必要だ」と述べるにとどめた。
首相は原発の海外輸出について原発事故を挙げ「経験を生かし、世界と共有する責任がある。その中で、我々の高い水準の技術、ノウハウを世界に出していくべきだ」と意欲を示した。
◆TPP
◇「公約違反」答え避け
大串博志氏(民主党)「586品目を守らないと公約違反になるのではないか」
首相「守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益による最善の道を追求する。これが公約だ」
政府・自民党はTPPに関連し、コメや麦など農産物の「重要5項目」は関税撤廃の対象から除外する「聖域」とした。民主党が追及したのは、5項目を細かく分けた586品目のうち一部でも関税撤廃になれば、「公約違反」にあたるのではないか、という点だったが、首相は直接の答えを避け、「守り」の姿勢が目立った。