仕事を拓く
若い民からの成長戦略
【政治】震災復興 成長戦略 都合いい数字引用 所信表明演説安倍晋三首相が十五日行った所信表明演説では、デフレ脱却に向けた成長戦略の実現、被災地の復興加速、福島第一原発の汚染水対策などを重要課題と位置付けた。しかし、政権にとって都合のいいデータが多く示され、厳しい現実を示す数値は示さなかった。これでは国民の信頼は得られない。 (城島建治、横山大輔) ◇経済首相は経済政策に関し「昨年末○・八三倍だった有効求人倍率は、八カ月で○・九五倍になった」と、雇用状況が改善していると強調。「若者、女性をはじめ、頑張る人たちの雇用を拡大し、収入を増やす」と明言した。 だが、総務省の労働力調査によると、政権が発足した昨年十二月以降、非正規雇用の労働者は増加している。昨年十二月は約一千八百四十三万人だったが、今年八月には約六十三万人も増えて約一千九百六万人。過去最多の水準になった。逆に、正規雇用の労働者は微減しており、安倍政権の政策が雇用の安定につながっているとは言えない。 ◇復興東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた集落の高台移転について、首相は「ほぼすべての計画が決定し、用地取得や造成工事の段階に移った」と順調に進展していると説明した。 しかし、震災から二年半がたつのに、対象の三百三十四地区のうち、造成する業者が決まったのは百四十三地区しかない。造成工事が完了したのは十地区のみ。安倍政権が経済政策として全国で公共事業を増加させたことで、被災地で資材や作業員を調達しにくくなった影響も出ている。 ◇汚染水東京電力福島第一原発の汚染水問題に関して「漁業者が事実と異なる風評に悩んでいる。食品や水への影響は基準値を大幅に下回っている。これが事実だ」と述べた。 しかし、福島県沖で捕れた魚から、食品の基準値(一キロ当たり一〇〇ベクレル)を超える放射性物質が検出されるケースが相次ぐ。今月だけでも、岩礁帯に生息するシロメバルから一キロ当たり五〇〇ベクレル、海底のババガレイから同じく三〇〇ベクレルの放射性セシウムを検出した。 ◇外交演説では、外交政策について「首相就任から二十三カ国を訪問し、延べ百十回以上の首脳会談を行った。世界の平和と繁栄に貢献する」と語った。 しかし、歴史認識などをめぐり対立が続く中国、韓国との首脳会談は実現していない。演説では両国との関係改善には触れず、事態打開のめどが立っていない現状を浮き彫りにした。 PR情報
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