2013年10月19日土曜日

核燃料は取り出せず、現場は過酷化、作業員は素人になる現場



福島第一原発は、まったくコントロールされていない。2013年10月17日、東京電力は汚染水の入ったタンクに水を移し替える作業をしている途中でポンプが電源異常で停止し、汚染水が溢れて漏れ出したと報告した。

その結果、高濃度汚染水が約300トンも溢れ出て漏れ出し、周囲は1リットルあたり40万ベクレルもの放射性ストロンチウム90等の放射性物質が漏れたという。

これをさらりと読むと、「40万ベクレル」という数字が頭に残って終わるが、それが300トンなのだから、現場では40万ベクレルではない。計算してみて欲しい。

1トンは1000リットル。300トン漏れたのなら30万リットル漏れたということになる。

1リットルあたり40万ベクレルのストロンチウムというのであれば、現場では1200億ベクレルもの放射性ストロンチウムが漏れたということだ。

だから、本当はマスコミはこのように書くべきなのである。「1200億ベクレルが漏れた」と……。


部分的にはコントロールされていないということだ


さらに、マスコミも東電も事態を矮小化している可能性がある。ストロンチウム90「等」と書いているが、実は他にも射性物質のトリチウム(三重水素)も漏れている。

こちらは79万ベクレルが検出されている。数字としてはこちらの方が大きい。もっと深刻なのは、このトリチウムは汚染水を浄化する多核種除去装置では除去できないことだ。汚染水は、安全な水にならない。

安倍首相は2013年9月に、「状況はコントロールされている」と断定的に言っていた。

しかし、2013年10月16日の衆院本会議では微妙に軌道修正を行っており、「全体的としては、コントロールされている」と言い換えた。

全体的にコントロールしているということは、逆に言えば部分的にはコントロールされていないということでもある。

思えば、2011年12月16日、当時の首相だった野田佳彦は、早々と「原発事故収束宣言」を出して、世界中から袋叩きされた。収束などしていないのだから、袋叩きにされて当然だった。

この馬鹿げた「原発事故収束宣言」から2年経った現在でも、福島第一原発で起きている事態は、コントロールできているというには程遠い。

政治家がいくら矮小化しても、現場ではどんどん「過去最悪の汚染」が重なって収束不可能になっている。

収束した、コントロールされている、と政治家がいくら隠蔽しようとしても、現場は放射能まみれになっているのだ。やがて現場作業は破綻し、放棄せざるを得ない状態になる。

なぜ、収束に向かっていないのが分かるのか。単純な話だ。メルトダウンした核燃料が汚染源だが、それが取り出せていないからだ。

核燃料が取り除かれたかどうかで判断すべき


福島第一原発の事故が収束に向かっているのかどうかは、メルトダウンした核燃料が取り除かれたかどうかで判断すべきだ。

汚染源である核燃料が取り除かれたら、汚染は止まるのだから、事態が収束に向かうと判断するのはそれからだ。

汚染元が除去されていないのであれば、当たり前のことだが、いつまで経っても問題は解決しない。汚染はずっと続いて行く。これが、原発事故の実態だと言える。

では、メルトダウンした核燃料は取り除かれる準備ができているのか。もちろん、できていない。なぜなら、爆発した1号機にも2号機にも3号機にも人が入ることができず、中をのぞくことすらもできないからだ。

さらに4号機には核燃料を保存しているプールがあって、こちらは建屋に格納されたになっている。

プール内で保管されているのだから、さっさと安全な場所に核燃料を移動すべきだと誰もが思う。しかし、それすらもまだできていないのである。

なぜならプール内に瓦礫が埋まっている上に、4号機は傾いており、いつ崩れ落ちるか分からない。現場は高線量であり、作業も遅々として進んでいない。

2011年3月12日以降、現場は収束もコントロールもされておらず、まったく何の進展もないまま、ただ汚染水が溜まり続けてどんどん現場が危険になっている。

この中で、作業員の士気は低下し、現場では2日に1回のペースで事故が起きているとも言われている。なぜ、処理作業のミスが続き、現場は混乱しつつあるのか。


人員不足を埋めるために素人の作業員を投入


現場の混乱は、作業員の質が低下しているからだ。すでに福島の原発が爆発事故を起こしてから2年近く経っている。最初に投入されたベテランの作業員は、すでに線量の限界に達しており、次々といなくなっているのだ。

そして、人員不足を埋めるために素人の作業員を投入せざるを得ない事態になってしまっている。

今、福島で作業をしている人たちは訓練された人たちではない。現場作業など経験したこともない人間が、やむにやまれず送り込まれているのだ。

あまりに人為的ミスが続くのに業を煮やして、原子力規制委員会の田中俊一委員長は「避けられる事故が起こっていること事態が問題」だと苦言を呈している。

2013年10月9日、東京電力はホースの交換作業を進めていた作業員6人が誤って高濃度の汚染水を浴びたと発表したが、この漏れた汚染水にはストロンチウム90が3400万ベクレルも含まれていたものだった。

いずれも東電の社員ではなく、下請けの人間である。東京電力はこういった人たちを「使い捨て」しているのだが、人が足りないので、少しでも長く「使う」ために、作業員の内部被曝を軽めに見積もっているとも言われている。

これを指摘したのは国連放射線影響科学委員会である。半減期の短い放射性ヨウ素133を考慮せず、内部被曝を20%過小評価しているとの指摘だった。

実際は、線量計を外して作業をする命がけの作業員も多く、20%の過小評価どころではないとも言われている。そして、そうやって命がけで作業をしても、線量が基準を超えれば、そのまま使い捨てにされるのだ。

汚染元の核燃料は取り出すことができず、現場はどんどん過酷な状況になり、作業員はどんどん素人化しつつある。いずれは、完全なる人員不足となるのは目に見えている。

まずは東電社員を作業員として送り込むべきだ。

そして、足りない人員は、生活保護を受けている男性、囚人等も、作業員として使わなければならない。それでも足りなければ、原発を推進してきた東大教授、政治家、芸能人、原発推進論者に現場に投入すべきだろう。

小泉純一郎元首相も原発廃止宣言を行っているが、これは当然のことであり、この現状を見てもまだ原発が問題ないと言っている人間の方が異常なのである。
 

〓 この話題について、参考になる書籍・メディア

ご注意

リンクに関しては承諾確認や報告は必要ありません。抜粋(要リンク)も常識の範囲であれば、何ら問題はありません。ただ、全文転載は不可とします。(本来は全文転載も許可するスタンスですが、一部で意図しない使われ方をされていたことを指摘されて知りました。しばらく許可しない方向で行きます)