名古屋グランパスのDF田中隼磨(31)が「鉄人の誓い」を新たにした。19日の仙台戦でJ1史上33人目の通算350試合出場に到達。歴代で4番目の若さでのスピード達成となった。厳しい自己管理のもと試合に出続ける右サイドバックは、「試合に出るだけじゃダメ。どれだけ勝ちに貢献できるか」とひたむきに走り続ける覚悟だ。
疲れ知らずの鉄人がキャリアに新たな勲章を加えた。通算350試合出場という記録自体も偉大だが、さらに出色なのは31歳3カ月という若さ。30歳3カ月の山口智(千葉)らに続き4番目だ。田中隼は「先のことは考えず、一試合一試合積み重ねてきた結果です」。控えめに喜びを語った。
01年に横浜Mでデビューして以降、コンスタントにピッチに立ち続けている。長期離脱したのは02年に左足中足骨を骨折したときの一度だけ。故障がつきもののサッカー選手としては異例だ。
秘訣(ひけつ)は厳しい自己管理。睡眠は最低でも8時間。酒は一滴も飲まず、お菓子などもほとんど口にしない。田中隼は「好きなものは引退してから好きなだけ食べればいい。自分では節制しているつもりはなく、これがプロとして当たり前という考えでやっている」とサラリと言う。
高いプロ意識は練習にも表れている。試合間隔が空いて走り込みが足りないと感じれば、居残りで黙々と走る。試合中の走行距離でチーム随一を誇るタフネスは、地道な努力のたまものだ。
プロ12年目、31歳を迎えた今季も全29試合に出場中。「若いころと比べて肉体的な変化は感じない」と田中隼は言い切る。経験を加えたプレーは円熟味を増している。
「試合に出るだけじゃダメ。勝利に貢献し、優勝争いをし続けないと。今の状況(13位)は情けない。ピッチの上でこの気持ちを表したい」
人一倍勝利にこだわるベテランが、チームに魂を注入し続ける。 (木村尚公)
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