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割安株価は親会社のせい、SBI北尾社長がソフトバンク批判

2002年2月26日
 ソフトバンクグループのベンチャーキャピタル(VC)であるソフトバンク・インベストメント(SBI)が2月15日、東京証券取引所第1部市場に上場した。同日、東証で記者会見した北尾吉孝SBI社長は、晴れ舞台にもかかわらず、笑みを見せることはほとんどなかった。そればかりか北尾氏の口からは、ソフトバンクやメディアへの不満が堰を切ったように飛び出した。

 「(重複上場なので)改めて記者会見というほどのことはない。皆さんからの質問に答えたい」と切り出した北尾氏だが、実際には会見の30分間のほとんどを独演に費やした。

 中でも注目に値するのは、ソフトバンクの金融事業を担うソフトバンク・ファイナンス社長として、親会社であるソフトバンクのIR(投資家向け広報)姿勢を公の場で批判した点だ。

 株価水準への評価についての質問に対し、北尾氏はSBIやネット証券のイー・トレードで、「明らかに(ソフトバンク・ディスカウントの)影響が出ている」と指摘する。このソフトバンク・ディスカウントとは、多額の有利子負債が不安視されていることなどから、投資家がソフトバンク株を敬遠し、それにつられてソフトバンクのグループ企業というだけの理由で株価が割安になっている、というものだ。

 北尾社長は「(ソフトバンクは)明らかにIRが不足している。孫(正義社長)さんは決算発表の時には自ら説明をしているが、その時だけでなく継続的に(国内外のアナリストや機関投資家に)説明して回ることが大切だ」と切り捨てた。孫社長のほか、名前こそ出さなかったが、北尾氏の後任最高財務責任者(CFO)である笠井和彦取締役もやり玉に挙げていたのは明白だ。

 言うまでもなく、北尾氏はソフトバンクの取締役だ。「ソフトバンク・ディスカウントは全く不当な評価」「責任の一端は私にある」ともつけ加えている。が、その北尾氏が他人事のように親会社を批判したのは、様々なメディアで「不安説」が取り沙汰され、株価低迷が続くことに対し、孫社長や笠井氏に注意喚起したかったのだろう。

 その一方で北尾氏は、SBIとして積極的にIRを行っていくことを表明し、そのうえで自社のファンドの運用成績を不安視する見方についても一蹴した。いわく「一部雑誌に投信とVCを同列に扱っている無知な記者がいる」。決して激することはないが、反論は受け付けないような物言いだ。「投信は8割の銘柄で成功しないといけないが、VCは3割打者でいい」のだという。

「25%の銘柄は額面で投資」

 さらに北尾氏は続ける。「(SBIが)投資した370社のうち、額面でカネを入れた、つまり創業者と同じ低いコストで買いつけた銘柄が25%ある。額面の5倍までの価格で投資した銘柄を含めると71%ある」。SBIが上場した2000年12月15日以降に新興3市場に公開した銘柄の株価を見てみると、ざっと額面の20倍になっているから、運用成績は問題ないという論理だ。

 北尾氏がとうとうと持論を展開する中で、ある記者から質問が出た。「次の成長戦略をどう見るか。VCの運用環境は厳しいのではないか」。記者の質問が終わらないうちに、北尾氏は発言をさえぎるかのようにしゃべり始めた。「厳しい環境は全くない」。

 SBIには運用手数料として年間60億円が安定的に入り、経費を差し引いても33億〜34億円の利益が残ると強調。「ある意味で経営は楽」とまで発言し、余裕を見せる。

 北尾氏自身も言うように「経営は結果」。ファンドの成績は運用を終了した段階で、はっきりする。それでも言えることがある。SBIが独自に資金を集め、独自に運用を終了したファンドはまだ1つもない。要するに資産運用会社に不可欠なトラックレコード(運用結果の記録)をSBIは持ってない。

 例えば「投資家利回り88%」と自画自賛するファンドは、米ヤフーを当てた孫氏、ないしはソフトバンクの看板で資金を集め、運用を開始したファンドをSBIが引き継いだにすぎない。

 親会社をどのように批判しようと、それは構わない。だが、SBIが孫氏やソフトバンクのふんどしで相撲を取っていることを、まさか北尾氏は忘れたわけではあるまい。(花見 宏昭)
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