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「メーンバンク」はみずほ---ソフトバンク笠井CFOに聞く

2002年3月13日
 ソフトバンクが銀行との取引関係を見直し、メーンバンク制の復活に動いた。今のメーンはみずほホールディングスという。かつて第一勧業銀行、日本興業銀行などと成長段階に応じてメーンを変えてきたうえ、一時は「コアバンク制」を提唱し、銀行の貢献度に応じて借入金のシェアを変更するなど、メーンバンク不要論を打ち出したことさえある。そのソフトバンクが金融機関との長期安定的な関係を重視する方向に、舵を劇的に切った。姿勢転換の狙いや財務戦略の方向性について、最高財務責任者(CFO)の笠井和彦取締役に聞いた。(聞き手は花見 宏昭)

 財務の基本戦略として、多様な調達手段を持つことが大切だ。また、企業の財務戦略としてバランスシートをスリム化していく必要がある。

 こうした面でのアドバイスや様々な情報を頂戴できる点から、銀行取引は極めて重要だ。非対称デジタル加入者線(ADSL)を利用したブロードバンド(高速大容量、BB)事業では、通信関連機器にリースを使ってオフバランス化し、資産がバランスシートに載らないようにした。BB事業が軌道に乗り、キャッシュフローがきちんと入ってくる状況が見え始めたら、証券化の方式を取り入れたい。今年4〜6月には実現できるのではないだろうか。

 9月までには、BB事業で対象資産の事業収益だけを返済原資とするノンリコース(非遡及型)のプロジェクトファイナンスも導入したい。いくつかの金融機関から提案を受けている。

 ソフトバンクは2001年10月にコミットメントライン(自由に借り入れできる資金枠)を書き換え、単体として800億円の資金枠を確保した。ここに参加してもらっている6行を主な取引銀行と考えている。

 具体的には、みずほホールディングス、三井住友銀行、UFJホールディングス、東京三菱銀行、住友信託銀行、あおぞら銀行だ。メーンがみずほ、準メーンが三井住友、UFJという認識だ。

 メーンバンク制といっても、かつてのように株式を持ち合うわけではない。当然のことながら企業の運営、経営リスクは企業自らが背負っている。何から何まで企業の面倒を見るというメーンバンク制は既に過去のものになった。

 個別案件ごとに最も有利な条件を提示した銀行と取引していくやり方もないわけではないが、それではソフトバンクの事業展開や財務戦略をきちんと理解してもらえるか疑問も残る。継続的にサポートしてもらうためにも、主取引銀行には節目ごとに財務データを渡し、財務状況や事業戦略を説明するようにしている。

 財務リストラにも拍車をかけている。信用リスクに敏感な市場を注視し、安全性を強調する考えだ。

 当社は最近の不安定な金融市場を受け、有利子負債とそこから手元流動性を差し引いた純有利子負債をさらに落としている。昨年秋以来、連結子会社を連結対象から外したり、保有株式を売却することで、実質的に1600億円の純有利子負債を削減した。2001年9月末時点で、純有利子負債は3393億円。2002年3月期末では、これを1900億円の水準まで減らしたい。

●手元資金は厚めに持つ
 発行した国内普通社債(SB)を買い戻したのも市場の信頼を回復するためだ。既に実施した分を含め、3月末までに200億円前後まで積み上げたい。さらに4月以降も実施していく。

 市場環境にもよるが、純有利子負債は1000億円前後まで、できるだけ早く減らしたい。そうした中で、手元流動性は常に1200億〜1500億円を確保する。通常必要なのは200億〜300億円規模だが、厚めに持つつもりだ。それは大きな買収を考えているからではない。金融市場に不確定要因が多く、リスク管理の面を重視しているからだ。

 笠井氏は富士銀行副頭取、安田信託銀行会長を経て2000年6月、ソフトバンクの取締役に就任した。野村証券出身だった前任CFOの北尾吉孝取締役とは行動、発想が大きく異なる。「絵に描いた餅」と懸念された保有株の含みを換金し、純有利子負債を削減してみせたことは、資金繰りを不安視する声を打ち消す効果が大きい。だが、市場からの信頼回復はまだ緒に就いたばかりだ。
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