特集ワイド:「内部告発小説」の現役官僚に聞く 「再稼働いいのか」問いたい

毎日新聞 2013年10月22日 東京夕刊

 ■「日本の原発は世界一安全」はウソ

 ■政界への献金「モンスターシステム」

 ■電力業界に冷たい職員のチェックリスト

 ナゾの覆面作家が現れた。若杉冽(れつ)さん。現役のキャリア官僚である。9月に出版した小説「原発ホワイトアウト」(講談社)で、原発再稼働にひた走る経済産業省と電力業界、政治家を結ぶ闇のトライアングルを描き霞が関からの「内部告発」として波紋を広げている。本人に胸の内を聞いた。【吉井理記】

 東京都内の料理屋に現れた若杉さん、もちろん覆面姿ではなく霞が関の住人特有の、特徴に乏しいスーツ姿だ。「尾行対策にね、後ろを気にしながら道をあちこち変えて。時間かかっちゃいました」。ささやきながら腰を落ち着け、ようやく表情を緩めた。

 東京大法学部卒、国家公務員1種試験合格、霞が関の省庁勤務−−公にされた素性はこれだけだ。もちろん執筆は役所には秘密。近親者にしか明かしていない。

 小説は参院選で政権与党が大勝するところから始まる。電力業界の政治献金で飼い慣らされた与党政治家と業界幹部、両者と軌を一にする経産官僚が原発再稼働に向けて暗躍する姿を縦軸とし、役所のあり方を疑問視する若手官僚の抵抗、原発テロ計画といったエピソードが横軸として交錯していく。「柱の部分は私の知る事実がベース。役所では表立って話題にしませんが、裏ではみんな『詳しすぎる。作者はだれだ』と大騒ぎです」。静かに笑う。

 リスクを冒してまでなぜ執筆を? 「現実世界は原発再稼働に向けて着々と動いています。一方で私は、電力業界のずるさや安倍(晋三)首相の言う『日本の原発は世界一安全』がウソなのを知っている。私は公僕です。そうした情報は国民の税金で入手したとも言える。もちろん国家公務員として守秘義務もある。だから小説の体裁を借りて『みなさん、このまま再稼働を認めていいんですか』と問いかけたかった」。声が知らず知らずのうちに高くなり、テーブルに広げた著書を何度かたたいた。

 「電力業界のずるさ」の最たるものが、若杉さんが「モンスターシステム」と呼ぶ巨大な集金・献金システムだ。作中で描いた構図とは−−。

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