将棋の奨励会で里見香奈さん(21)が7月、女流棋士で初の2段になった。奨励会には男女混合で有名棋士も参加。香奈さんは今後3段、4段を目指していくのだそうだが、26歳までという年齢制限がある。昇段の失敗は「実質的な引退勧告」になるのだそうだ。
香奈さんの名言「好きな道なら楽しく歩け」も、夢が実現しなければ好きな将棋も捨てなければならない。先日、お父さんの彰さんからメールをいただいた。「香奈の心はすでに3段への挑戦にあるようです」とあった。年齢制限は時間との戦いだ。「女流棋士」から「棋士」へ。前人未到の挑戦の何とも非情なことか。年齢という壁を背に“火中のクリ”を拾わなければならない称号だ。
スポーツ、特に格闘技界には「負けたら引退」と口にしながら、引退と撤回を繰り返すアスリートが多い。何食わぬ顔で現役続行宣言することの、なんと見苦しいことか。そこには引き際の美などなくなっている。「武士に二言はない」や「有言実行」という言葉もある。アスリートたちは将棋界の勝負魂を学ぶべきだ。 (格闘技評論家)
この記事を印刷する