OPCW:中国に残る旧日本軍化学兵器「処理を最優先に」
毎日新聞 2013年10月22日 02時30分(最終更新 10月22日 02時41分)
【ブリュッセル斎藤義彦】ノーベル平和賞を受賞する化学兵器禁止機関(OPCW、本部オランダ・ハーグ)が、日本が中国で行っている遺棄化学兵器の処理現場を先月訪問し、3日付の報告書で作業の「遅れ」を指摘、処理をOPCWの「最優先事項」と位置付け、日本に「できるだけ早い」処理により、化学兵器禁止条約を順守するよう求めたことがわかった。日本は9月10日付のOPCWへの報告書で遺棄兵器が多様な場所で見つかり「腐食も激しく危険」と「困難さ」を強調してOPCWに理解を求めた。
OPCWはウズンジュ事務局長や決定機関・執行理事会の主要国など16人の調査団を中国北部吉林省ハルバ嶺に派遣。日中の担当官から事情を聴き、現地視察を行った。
日本は化学兵器禁止条約で定めた2012年4月の廃棄期限が守れずOPCWから特別に延長を許されている。OPCWは現地調査で処理の実情を確認することが必要と判断した。
報告書によるとハルバ嶺では30万〜40万発の化学兵器が埋まっている一方、発掘回収作業は昨年から始まったばかりで、一部を発見したに過ぎない。
中国側からはOPCWに遺棄兵器による市民や環境への「脅威」と作業の遅れへの「懸念」が伝えられた。
日本側は先月の報告書などで、旧日本軍の化学兵器の情報が不足し特定が難しいほか、山岳地帯や川底、地中、都市部など多様な場所から他の爆弾とともに見つかり、作業が危険で、北部では冬場に作業を中断する必要があるなど「困難」さを強調。ハルバ嶺では22年を廃棄終了のめどとしているが実現できるか不明。OPCWはハルバ嶺での廃棄開始が早期処理完了に「決定的」と位置付けた。
ウズンジュ事務局長は毎日新聞に「廃棄がより大規模、迅速になるよう望む」と期待を示した。