遺棄化学兵器:戦後68年…40万発?処理に情報不足
毎日新聞 2013年10月22日 02時35分(最終更新 10月22日 02時43分)
【坂口裕彦、ブリュッセル斎藤義彦】ノーベル平和賞を受賞する化学兵器禁止機関(OPCW)が現地視察団の報告書で日本に中国での遺棄化学兵器の迅速な処理を求めたが、背景には腐食や変形などによる作業の難しさのほか、化学兵器の埋蔵場所について資料が不足している事情もある。日本政府はこれまで1200億円以上を投入しているが、戦後68年が経過し、適切な情報を得るのが年々、困難となる「時間の壁」が立ちはだかっている。
日本政府がOPCWの決定機関・執行理事会に今年7月と今月、中国での遺棄化学兵器の現状を伝えた報告書によると、今年は北東部の吉林省ハルバ嶺や、中部・武漢、南部の広州までの広い範囲で9カ所、計199発の遺棄化学兵器を回収・確認した。確認中のものを含めると254発になる。
この問題は、1990年に中国側が日本政府に解決を要請したのがきっかけ。97年に発効した化学兵器禁止条約に基づき、日本政府が廃棄を行い、中国政府が協力することになった。中国側のOPCWへの説明によると、これまで全国の17省90カ所で発見されている。2022年を廃棄終了のめどとしているが、廃棄作業は大量に残り、実現可能性は不透明だ。
中国南部では10年に始まった南京での廃棄を終え、武漢での廃棄準備が始まった。北部では石家荘での廃棄作業が開始。9月現在で4万9682発のうち、3万7064発を処理。16年終了を目指す。
しかし、これとは別にハルバ嶺では30万〜40万発が埋まっていると推定される。発掘・回収は12年末から始まったばかりだ。地域によって回収のスピードにばらつきがあり、日本政府関係者は「(埋蔵場所について)現地住民の記憶頼みの面もある」と難しさを強調する。OPCWは日中の協力を評価した上で、「多くの課題が残されている」と指摘した。