学徒出陣70年:国立競技場で追悼式 石碑は五輪で移転も
毎日新聞 2013年10月21日 18時59分(最終更新 10月21日 19時03分)
太平洋戦争中、学生たちが戦地に向かった「学徒出陣」から70年がたち、当時壮行会が開かれた国立競技場(当時は明治神宮外苑競技場、東京都新宿区)の敷地内にある石碑の前で21日、追悼式が開かれた。石碑は戦死した学生たちを悼み、平和を祈念して1993年に建てられたが、2020年の東京五輪に向けた同競技場の建て替えが始まれば、移転を迫られる。参列した元学徒からは敷地内に石碑を残すことを望む声が多く聞かれた。
式には約100人が参列。黙とうし、石碑に献花した。元学徒のほか、スタンドで見送った元女学生の姿もあった。
70年前の壮行会で後輩らに見送られながら行進した油谷(あぶらや)孝さん(91)=東京都目黒区=は当時、立教大学2年生だった。海軍航空隊に配属されたが、目の調子が悪くなり、出征の順番が遅れて国内で終戦を迎えた。戦後、大学に戻ると、硫黄島やフィリピンで戦死した学友もいた。「勉強より国のために死ぬことが当たり前の時代。死のうと覚悟して行進した。生き残ったことが悔しかった。今では考えられない時代があって今がある。生きている限り、この場所で平和への思いを祈り続けたい」と話した。
今年9月、93年に石碑を建立したメンバーらが、国立競技場の建て替え後も石碑を敷地内に残すよう求める要望書を競技場長に提出した。競技場を運営する日本スポーツ振興センターは石碑について「工事中の保管場所なども含め、まだ何も決まっていない。有識者の意見を聞きながら検討していく」とコメントしている。【山田奈緒】