
並木製作所(現 パイロット)がこの世にダンヒルナミキを出したのが1930年(昭和5年)。 その2年後に、この50号バランス型ダンヒルナミキ 「No.50 Jumbo」 と称された万年筆が誕生した。 そしてこれは1936年(昭和十一年)野村證券が創立10周年の記念品として配られた品である。 興味深いのは、ペン先の印DUNHILL NAMIKIの刻印の上に野村證券の当時のロゴマークも刻印されている。 戦争を挟んで74年前の万年筆がほぼ完品状態で出てくるのは珍しいと思う。
すい込まれるようなうるしの美しさは、まさに日本の伝統工芸品だ。 比較をするため2003年に発売された50号大型万年筆「漆黒」といっしょに撮影した。
現在も、ダンヒルナミキ「No.50 Jumbo」の復刻版として50号大型万年筆が15万円で販売されている。

余談だが、野村證券十周年記念万年筆とは別に「野村證券 十周年追想記」を他のルートから手に入れた。 その当時の野村證券の社員が10年間を振り返り、個人的な思い出話しを書き記している。一般には出回らない書籍なため、内容は実に自由奔放で興味深い。 当時の社員数が400名とも書いてある。
右側の写真は思い出を語る座談会の風景だ。
記念品のダンヒルナミキを手元に置いて追想記を読んでいると、その当時の思いがより伝わってくるのは不思議だ。
【追記】2010/7/31これを記載をした後に、ある方から新たな情報を得ることができました。
この野村證券の記念万年筆に関する記事があるとの事。 さっそくご紹介します。
「ここに記念万年筆の真価あり」というタイトルで、前文の数行を要約すると、こういう内容だ。
計らずも手に握られた一本の万年筆が、記念品として3万円に近い商談を成立をもたらしたという快報、実に万年筆業界始まって以来のトピックである。 今を時めく野村證券株式会社、資本金1千万円の大組織の統師野村徳七氏が本年ちょうど同社創立十周年記念を迎えるに際し、全国11支店並びに外国支店800人の社員に授与の記念品が、ダンヒルナミキ50号金ペン付き万年筆であった。
同品はご承知のごとく定価35円、普通の万年筆の数本分にも相当する超特大型、それだけにしっかりしていて壊れにくい、そして書き味のこころよさを誇る実に質、外観共に逸品そのものである。<以下省略>

■昭和11年当時の物価を調べてみました。 日本の人口は約7000万人
豆腐1丁が5銭、たばこ(20本)が12銭、日本酒1升が1円89銭、教員の初任給は50円。
現在と比較すると、物価が2000倍で収入が5000倍になったことになる。
と、考えると当時のダンヒルナミキの価格は現在に置き換えると1本7万円、総額5600万円の記念品だったんですね。
ちなみに私は、当時の定価35円の10,000倍で手に入れたことになる。。。微妙
ついでに・・・
■昭和11年には、こんな出来事があった。
・近代日本史上最大のクーデター、二・二六事件勃発
・国産自動車の本格的な生産が始まる
・ベルリン五輪開催。前畑秀子が200m平泳ぎで金メダル。「前畑がんばれ」のラジオ実況
・日本初のプロ野球試合「東京巨人軍」対「名古屋金鯱軍」開催
・国会議事堂(当時:帝国議会新議事堂)落成