安倍晋三首相の靖国神社参拝について、側近が「年内にも参拝するだろう」との見方を示した。
これは、自民党の萩生田光一総裁特別補佐が20日、テレビの報道番組で「「(首相)就任1年の中でその姿勢を示されると思う」として、今年12月末までに参拝するという見通しを述べたもの。靖国神社は太平洋戦争を主導したA級戦犯が合祀(ごうし)されているなど、侵略戦争の美化を象徴する施設だ。
萩生田氏は「一部では安倍首相が在任中に(韓国や中国の反発を懸念して)一度だけ靖国神社を参拝するのではという見方もあるが、私は、就任1年という時間軸の中で本人が(参拝の)姿勢を示されると信じている」と語った。萩生田氏は8月15日、安倍首相の玉ぐし料を首相に代わって靖国に納めた。
安倍首相は19日、福島県を視察した時に記者会見で「第1次安倍政権(2006-07年)で任期中に靖国神社を参拝できなっかったことは『痛恨の極みだった』と言ったが、その気持ちは今も変わらない」と述べた。さらに、「国のために戦って倒れた方々に対し、尊崇の念を表して冥福を祈る。その気持ちは今も同じであり、リーダーとしてそういう気持ちを表していくことは当然のこと」とした。
靖国神社秋の例大祭(17日-20日)に合わせ、安倍首相の実弟・岸信夫外務副大臣が19日、古屋圭司国家公安委員長兼拉致問題担当相が20日にそれぞれ靖国神社を参拝した。岸外務副大臣は母方の岸家の養子になったため安倍首相と姓が異なる。「(外務省の要職を務めているのに靖国神社を参拝すれば)外交問題化する可能性があるのではないか」という記者の質問に、岸氏は「そうは思わない」と答えた。これに先立つ17日に安倍首相は靖国神社に供物の真榊(まさかき)を私費で奉納、新藤義孝総務相や国会議員らも集団参拝した。
一方、朝日新聞は社説で「靖国神社は、亡くなった軍人や軍属らを『神』としてまつった国家神道の中心施設だった。戦後は宗教法人として再出発したが、A級戦犯14人を合祀(ごうし)したことで、戦争責任の否定につながる政治性を帯びた」とし、政治家の靖国神社参拝を批判した。
毎日新聞も18日付の社説で「靖国神社は1978年に東条英機元首相らA級戦犯14人を合祀した。靖国が合祀した背景には(侵略戦争を断罪した)東京裁判を否定する思惑があったことが関係者の証言などから明らかになっている」と書いた。さらに同紙は「春と秋の例大祭や終戦記念日に首相が靖国を参拝するかどうかで国論を二分する騒ぎは終わりにすべきだ。安倍首相が長期政権を目指すというのならA級戦犯の分祀(ぶんし)や国立追悼施設の建設案など抜本的な解決策を真剣に検討してほしい」と主張した。
日本経済新聞は、安倍首相が靖国神社を参拝しないのは韓国や中国だけでなく、米国にも配慮した措置だと分析した。米国のジョン・ケリー国務長官とチャック・ヘーゲル国防長官が3日に東京を訪れ、靖国神社ではなく千鳥ケ淵戦没者墓苑を参拝したのは、安倍首相に靖国神社を参拝しないようにというシグナルを送ったものだとの見方があると報じている。