自民、公明、民主党など超党派の国会議員でつくる「アルコール問題議員連盟」(会長・中谷元自民党衆院議員)は「アルコール健康障害対策基本法案」をまとめた。国民に適量の飲酒を促し、健康を回復させたりすることがねらいで、今国会への提出を目指す。

酒の飲み過ぎや未成年の飲酒などによるアルコール健康障害は、飲酒運転や暴力、虐待、自殺、失業といった社会問題を引き起こす可能性が高いとみられる。そのため、飲酒による心身の障害を予防する対策のとりまとめなどを、国に対して義務づけるために法制化するという。

具体的には、政府は、不適切な飲酒を誘うような商品表示や販売をなくすための施策を講じるほか、依存症患者の社会復帰やその家族の支援に取り組む。政府一体で取り組むため、内閣府、法務、厚生労働両省、警察庁などで構成する「対策推進会議」を新設する。

(時事ドットコム「飲酒対策、超党派で法案=臨時国会に提出」2013/09/18 17:22)

基本法制定を目指す団体や個人の集まり「アルコール関連問題基本法推進ネット」(アル法ネット)のリーフレットに紹介されている「アルコール健康障害対策基本法案」によると、

  1. 断酒が必要な「依存症」の人たちには、再発予防のための治療、ケア、支援
  2. ハイリスク飲酒の人たち(1日に60グラム以上を飲酒する人。生活習慣病のリスクを高める多量飲酒は、男性40グラム以上、女性20グラム以上)に対しては、節酒させるなど進行予防
  3. ローリスク飲酒(1日20グラム程度の適度な飲酒)の人には、発生予防を、それぞれ目指す。

また、医療関係者のほか国や地方自治体、お酒の酒造販売事業者、健康増進事業者、そして国民にもアルコール健康障害の予防などの「責務」が設けられている。

厚生労働省の推計では、アルコール依存症患者は全国で80万人。依存症の疑いのある人は440万人、飲酒日に60グラム以上飲酒する多量飲酒の人は80万人に達する。基本法をめぐっては、患者や家族、医療者が大量飲酒の規制や患者支援に向け制定を求めてきた。

アル法ネットのホームページに掲載されている「アルコール健康障害対策基本法リーフレット」には、アルコール依存症患者や家族の切実な声が寄せられる。

■アルコール依存症の家族の声

本来、皆で飲む楽しいお酒が好きだった主人が一人酒となり、人の話に耳を傾けなくなった。「うるさい」と一喝し、ますます孤独になりました。

2年前の夏、主人は自分から病院に電話し、入院を決心しました。あの頃の私は、おろおろと見ているだけの不安な毎日でした。アルコール依存症と言われても偏見でしか見られません。明日は、家族の未来はどうなるのだろうか。眠れず、朝が来るのが恐かったのを覚えています。

あれから 2 年、主人は断酒生活を頑張ってくれています。この経験をプラスにかえて、まだまだ長く続く人生を二人して頑張りたい。今の穏やかな生活は、一日断酒あってこそだと心に刻んで。

基本法ができたら、苦しんでいる多くの当事者・家族が救われます。一日も早い制定を望んでい ます。

■子どもたちの声

お父さんが飲んでた頃は、「もう、ありえない」といった感じでした。飲んで仕事に行かない、うるさい、きたない、そのうち「死ねばいいのに」と思うようになって、最後の方では「俺が殺す」と普通に思うようになってきました。

(「アルコール健康障害対策基本法リーフレット」より抜粋)

同リーフレットでは「不適切な飲酒」として3つのタイプが紹介されている。

1.過剰な習慣飲酒
長期にわたり習慣的に飲むことでアルコール依存症、生活習慣病、がんなど慢性的な健康障害が引き起こされる。

2.酩酊に至る飲酒・深酒・暴飲・ドカ飲み
たまの飲酒であっても酩酊に至る量を飲めば急性アルコール中毒、事故、ケンカ、DV、性被害など、酩酊に起因する健康障害や社会問題を引き起こすリスクが高まる

3.飲んではいけない条件下での飲酒
未成年や妊産婦、車の運転、機会の操作など特定の条件下では適量ではなく、少量でも問題。飲酒はゼロに。


■世界も「アルコール対策」の動き

WHOは2010年、アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略を採択した。kotobankによると、小売りをする日や時間の規制、イベントでの販売規制、酒の広告の内容、量、メディアの規制、公共の場での飲酒対策/飲み放題、値引き販売の禁止や制限/アルコール課税、最低価格の導入などが対策例としてあげられている。
現在、イギリス、アメリカ、オーストラリア、韓国などが短時間に酔っぱらうまで飲む大量飲酒「ビンジ・ドリンキング」対策に取り組んでいる。

※アルコール対策法案について、皆様のご意見お聞かせ下さい。


【アルコール依存症・関連サイト】

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