再送-〔アングル〕対日投資倍増へ動き出した政府、戦略特区で法人税20% 岩盤規制緩和へ

2013年 10月 16日 07:34 JST
 
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(この記事は15日午後5時31分に送信しました)

[東京 15日 ロイター] - 政府は、2020年までに海外勢による対日投資倍増という目標達成に向け、本格的な政策展開に乗り出した。外資系企業の対日進出にとってネックとなってきたコストを引き下げるため、国家戦略特区における法人税率20%への引き下げが検討対象に上っているほか、きょう15日に召集された臨時国会では、国家戦略特区の根拠法案や、その他の企業誘致に関連した規制緩和を盛り込んだ法案も審議される見通しだ。ただ、医療・介護、雇用、農業などの分野では、依然として「岩盤規制」と表現される規制が残っており、対日投資の飛躍的な増加には、政府による一段の規制緩和実行が必要だとの声が各方面から出ている。

  <先進国で最低の海外勢の直接投資>

  安倍晋三政権は、日本経済の潜在成長力を引き上げるための成長戦略として、新興国などへの対外進出による成長取り込みと、国内の立地競争力強化による対日投資の呼び込みを国際展開の両輪と位置付けている。

中でも、対日直接投資に関しては、現在の約18兆円から2020年に35兆円へと倍増させる目標を掲げている。日本における海外勢の直接投資額は、国内総生産(GDP)全体のわずか3.7%と先進国の中で最低水準にある。

「この国の持続的な成長を国内企業だけに求めることは、バランスにかける」と長谷川閑史・経済同友会代表幹事が指摘したように、少子高齢化や生産拠点の海外流出が継続する中で、日本の成長戦略に置行けて海外勢の対日直接投資は欠かせない要素との認識が強まりつつある。

  <日本市場の潜在的魅力>

だが、少子高齢化が進み、市場規模がピークアウトしつつある日本に、敢えて進出するメリットが果たして海外企業にあるのか──。

この疑問には、1)アジアの統括拠点としての立地、2)高い技術力を持つ日本で研究開発拠点を構えるメリット、3)最先端商品の先行市場としての日本──という利点が欧米企業に意識されていると政府関係筋の1人は、ロイターの取材に答えた。

同関係筋によると、欧米企業がアジアで事業展開する際には、司令塔的な機能を果たす統括本部をITインフラなどが整備されている日本に置くメリットがあるという。

また、研究開発拠点では、技術水準の高い日本企業や日本の大学と共同研究することを目的に、医療・医薬分野やその他の先端技術分野が注目されている。直近の例では、仏のヘリコプターメーカー「ユーロコプター」が神戸市に研究機関を設立。大震災以降、防災対策で高まる特殊ミッションヘリコプターの需要に対応した開発を手がけている。

最先端商品における先行市場としては、ナイキ 、ギャップ は、日本市場で売れれば世界で売れる、との戦略で日本に早くから進出。ギャップは米国以外で世界最大店舗数を展開している。IKEAは当初事務所だけ開設したが、現在は数千人規模の雇用効果をもたらしている。

  <国家戦略特区で新興国並み税率に>

こうした点を意識しつつ、対日投資を呼び込むための最大の目玉となるのは「国家戦略特区」での様々な優遇措置だ。政府は具体的な規制緩和策を地方自治体などから募集しているが、その中で「法人実効税率を20%以下とする」ことを盛り込んだ東京都と大阪府の提案が有望視されている。

東京都は「東京オリンピック誘致の成功もあり、外国企業誘致のチャンス」(総合特区推進部)と、環境整備を始めている。大阪では「北大阪地区に国際拠点のある先端医療分野での誘致に力を入れる。世界的にみても高水準の研究レベルの拠点が複数あり、競争力はあるはず」(特区立地推進課)と見ている。

日本貿易振興機構(JETRO)の前田茂樹・対日投資部長は「対日投資促進活動をする上で、特区には大いに期待している」という。

ただ、法人税以外にも「物価の高さ、煩雑な手続きとその費用、生活環境など、すぐに解決が難しい問題もある」と指摘する。

特区ではこうした障害を低くして、外国企業が事業を起こしやすい環境を整える。9月に締め切られた募集では、地方公共団体や民間からすでに242件の応募があり、先攻中だ。

  <アジア各国との厳しい競争>

しかし、こうした大都市圏での特区が実現したとしても、他のアジア諸国以上に日本が魅力的だと感じさせるのは容易ではない。

特区での法人実効税率では0%の韓国に水をあけられており、中国でも環境・省エネや重要インフラプロジェクトの場合などは企業所得税が免税となる。シンガポールでは物価が東京以上に高いとされるが、法人実効税率が17%と低く、ビザ取得をはじめ諸手続きも簡便で総合的な魅力は高い。

<産業スペシャリスト派遣、大型案件狙う>

そこで、政府は海外企業の目を日本に向けようと、PR活動にも力を入れ始めた。経済産業省では、進出企業への補助金制度の拡充も含め、対日投資促進のための関連予算を2013年度の5億円から14年度に40億円への増額を要求。

実働部隊となるJETROでは、大型の対日投資案件をターゲットに、可能性のありそうな外国企業のキーパーソンを割り出し、個別にアタックを開始する。能動的にモデル提案や継続的な情報提供を行うため、民間人コンサルタントなどから「産業スペシャリスト」 を起用し、企業訪問を実施する予定だ。

年2、3回の海外でのトップセールスセミナーも開催し、政府や自治体の幹部自ら誘致活動を行う予定も組んでいる。11月にはまずシドニーで、来年1月にはロンドン、2月にはサンフランシスコと続く。

  <安倍政権に求められる規制緩和への気迫>

こうした「営業力」を展開するにはビジネス環境の改善という中身が必要条件となるが、政府が「岩盤規制」に切り込まなくては、海外からの直接投資を大幅に引き上げることは難しいとの指摘が、識者から出ている。

国家戦略特区のワーキンググループでは、外国人医師の診察や保険外併用療養の拡充といった医療分野のほか、解雇ルールの明確化や有期雇用の特例など雇用分野での規制緩和を検討しているが、厚生労働省などとの調整が続いており、難航する事態も予想されている。

 
 

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*統計に基づく世論調査ではありません。