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20 Oct 2013 16:26

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ジャニーズを追うヤンキー、アニメ、ロキノン系…最新SGチャートが日本文化の縮図に!?

リアルサウンド 10月17日(木)14時33分配信

ジャニーズを追うヤンキー、アニメ、ロキノン系…最新SGチャートが日本文化の縮図に!?
Sound Horizon『ハロウィンと夜の物語』(ポニーキャニオン)

●2013年10月07日〜10月13日のCDシングル週間ランキング

1位:バィバィDuバィ〜See you again〜/A MY GIRL FRIEND(Sexy Zone)
2位:HOT SHOT(GENERATIONS from EXILE TRIBE)
3位:ハロウィンと夜の物語(Sound Horizon)
4位:database feat.TAKUMA<10−FEET>(MAN WITH A MISSION)
5位:WARRIOR(B.A.P)
6位:顔笑れ!!(さくら学院)
7位:カモネギックス(NMB48)
8位:Re:NAME(大塚愛)
9位:Your Voice,My Life(横山ルリカ)
10位:光と君へのレクイエム(山下達郎)

 今週のシングルチャートTOP5に、ある「異変」が起こっていることに気付いた方はいるだろうか。

 異変とまで言ってしまうのは大げさかもしれないが、ヒットチャート上位に女性がいないのである。1位はジャニーズの男性アイドルグループ・Sexy Zone。2位はEXILE TRIBEの男性ボーカルユニット・GENERATIONS。3位はサウンドクリエイターのRevoによる物語音楽ユニット・Sound Horizon。4位はオオカミバンド・MAN WITH A MISSIONにラウドロックバンド10-FEETのtakumaがフィーチャリング参加。そして5位は韓国の男性アイドルグループ・B.A.P。Sound Horizonは特に男性的なイメージを打ち出しているわけではないが、そのほかは見事に“男”な並びになっている。

 6位にはBABYMETALを輩出した女性アイドルユニット・さくら学院が初のTOP10入りを果たしているし、その下にはNMB48や大塚愛が並んでいるが、2013年のオリコン週間シングルチャートでTOP5に女性アイドルグループや女性シンガーが登場しないのは、極めて稀なこと。振り返っても今年には1〜2度しかない。もちろん、理由はたまたま強力なリリースがそろわなかっただけで、そもそも“女性”がいないチャート状況が異例であることも、逆の意味でAKB48を筆頭とする女性アイドル全盛期がいまだ続く2013年の音楽シーンを象徴している風潮と言っていいかもしれない。

 また、このTOP5の並びが、(女性アイドル以外の)日本のカルチャー市場の現在のバランスを象徴しているように見えるのも興味深い。まずは依然としてマスに大きな勢力を持つ「ジャニーズ系」と、今も昔も日本のマジョリティである「ヤンキー文化圏」の象徴であるEXILE系。その二組が10万枚を超えるセールスを実現し、そして「アニメ/ゲーム文化」を背景にしたSound Horizonに、いわゆる「ロキノン系」のMAN WITH A MISSION、さらにはいまだ中年女性を中心に根強いを持つ「男性K-POP勢」が続く、という構図である。

 中でも、今回着目したいのはSound Horizon。自らを「幻想楽団」と称し、独自の世界観とストーリーを作品ごとに打ち出すコンセプチュアルな音楽ユニットだ。アルバムやシングルもストーリー性を持った組曲的な構成になっており、ナレーションやセリフも多用するミュージカルのような作風が大きな特徴。今回のシングルも「ハロウィン」をテーマに、かなりの情報量を詰め込んだ一枚になっている。ケルト文化やアメリカ西部開拓時代をモチーフにした歌詞など、さまざまな由来と背景がネット上で考察される様子は『あまちゃん』の情報消費に近いと言えるかもしれない。

 メジャーデビューからは9周年、さらにその前にさかのぼると90年代末に個人HP、2001年に同人音楽サークルとして活動を開始と、かなり長いキャリアを持っているSound Horizon。2008年にはアルバム『Moira』をチャート3位に、まだ2010年にはシングル『イドへ至る森へ至るイド』とアルバム『Marchen』をそれぞれチャート2位に送り込み、徐々に人気を拡大してきた。

 今年になってそんなSound Horizonの名前をさらに広めたのは、主宰のRevoが他作品とのコラボの際に使用する「Linked Horizon」名義によるアニメ『進撃の巨人』とのタイアップシングル『自由への進撃』が累積20万枚を超える大ヒットを記録したことだろう。このシングルは、2曲の主題歌ともう1曲の収録曲がアニメの世界観や物語性と密接に関わりあい、3曲が一つに繋がるストーリーを持ったもの。TVサイズの主題歌に関してニコニコ動画へのパロディ動画の投稿を許容したことや、その一方で発売日まで歌詞とフルサイズ音源を解禁しなかったことなど、ネット時代に即したプロモーション戦略も功を奏し、ヒットに結びついた。

 この「チャート一刀両断!」のコーナーで繰り返し書いている通り、現在のオリコンシングルチャートは「ヒット曲をどう作るか」という観点よりも「どういう特典をつけてパッケージを売るか」の指標になっている面が大きい。そんな中、Sound Horizonが徹底している「3曲で一つのストーリーを作る」「情報量を詰め込む」という手法は、CDシングルというパッケージに価値を持たせるという意味では非常に良心的、かつうまくハマれば効果的な手段と言えるのではないだろうか。

柴那典

最終更新:10月17日(木)15時19分

リアルサウンド

 

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