猫のIBD

猫のIBD

アイコン 猫のIBDって??

猫のIBDをご存じでしょうか。
私達はラピスの軟便時代に、猫の軟便や下痢についていろいろ調べている時に、この名称を知りました。

IBDとは、Inflammatory Bowel Disease の頭文字で、日本語では「炎症性腸疾患」と呼ばれています。主な症状は、嘔吐・下痢・食欲不振・血便・食欲の変化・体重減少など。これらが、単一で、あるいは複合で現れ、良くなったり悪くなったりを繰り返します。

ネココロナウイルスが原因によっておこる軟便・下痢症状とも似ており、私達も一時、ラピスの軟便の原因としてIBDを疑ったこともありました。

まだ認知度のあまり高くない病名かと思いますが、アメリカでは、猫の胃腸に発生する慢性疾患のなかで、頻度が高く、最も重要な病気のひとつと考えられています。日本においても、単に診断されていないだけで、実際にはかなりの数の猫達がこの病気で苦しんでいるのではないかという指摘もあります。

ここでは猫のIBDについて、まとめてみます。(※あえて「猫の...」と、頭につけて呼ばれるのは、人や犬にもIBDという病気がある為です)

猫のIBDとは

『よみうりペット』59号の「猫の健康大辞典」は、「嘔吐や下痢をする」というテーマでした。

この特集の中の「原因とメカニズム」の一項目で、「炎症性腸疾患(IBD)」がたいへん分かりやすくまとめられていますので、ここに転記させていただきます。

『猫の代表的な胃腸炎のひとつに「炎症性腸疾患(IBD)」がある。

これは自己免疫疾患の一つともいえ、免疫にかかわるリンパ球や形質細胞、好酸球(白血球の一種)などの胃炎性細胞が、腸管の粘膜固有層にまで浸潤。腸粘膜を傷め、腸管が肥厚したり、潰瘍を起こしたりして、嘔吐や下痢が慢性化し、衰弱していく。
末期的には、腸粘膜からのタンパク喪失が激しくなり、重度の低タンパク血症を起こして腹水が溜まってくることもある。

その要因は、遺伝性、食物アレルギー、細菌感染などの複合的なものと考えられている。

なおIBDは腸管型のリンパ腫とよく似ていて、鑑別が付かないことも多く、患部の細胞を採取して病理検査(バイオプシー)しないと、確定診断できない。

炎症性腸疾患(IBD)と確定診断がつけば、軽症なら低アレルゲン食を与えて様子を見る。症状が治まらないなら、食事療法を続けながら、ステロイド剤や免疫抑制剤などを投与し、炎症(つまり、炎症性細胞の腸粘膜固有層への浸潤)を抑えていく。
途中で治療をストップさせると治まっていた症状がまた悪化するため、要注意である。』

※執筆は、南大阪動物医療センター 吉内龍策病院長

さらに詳しく、猫のIBDとは

上の説明は、本来、解釈のやっかいな猫のIBDを、とても簡単にまとめたものと言えます。ただ、この説明だけでは、もちろん猫のIBDを全て把握できたとはいえません。より詳しくお知りになりたい方は、是非、こちらのサイトをご覧ください。

日本における猫のIBDについて、おそらく一番詳しくまとめられたサイトだと思います。

猫のIBD

上記サイトに詳しく説明されていますが、猫のIBDの場合、診断名としては「リンパ球性プラズマ細胞性腸炎」「好酸球性腸炎」が代表的なものです。

が、特にこれらの病気を確定診断することなく、腸に炎症が起きている状態を総称して「IBD」と呼ぶ場合もありますので、もし、愛猫にIBDの疑いがあると言われた場合、獣医師がどちらの意味でその言葉を用いているのか、しっかりとその説明を聞いて、判断しなくてはなりません。

おそらく、今後は日本でも「猫のIBD」の認知度は高まり、「IBD」と診断される猫達も増えてくると思われます。その為にも、私達猫ママ猫パパは、猫のIBDに関する基本的な知識を身につけておきたいものです。

*2010年5月1日追記*
最近では、「猫のIBD」という名称も徐々に浸透して来たようで、実際、IBDと診断される猫さんも増えて来ています。IBDの愛猫を持つママパパにとって、とても参考になる掲示板がありますので、紹介させていただきます。

猫のIBDネットワーク


我が家のルナの場合

子猫時代から快食快便だった我が家のルナが、2007年4月〜6月(年齢的には2歳3ヶ月〜2歳半)にかけて、軟便が続くようになりました。水下痢というほどではありませんが、常にユルいという状態です。

これには理由がありました。その前の年の9月にルナの異父妹にあたるルキアをお迎えしたのですが、ルキアがもっていたジアルジアがルナとラピスにも感染し、全頭駆虫をするも、何度も何度も再発をくり返すようになってしまったのです。ルナの体質が変わったのは、明らかにこのジアルジア感染がきっかけでした。

ルナの場合、駆虫薬を飲み始めるとすぐにジアルジアの栄養型がシストに変わってしまいます。シストになると駆虫薬は効きません。ルキアやラピスは、ジアルジアが栄養体のまま、数日後には完全に便中から見られなくなるのに対し、ルナはいつまでもシストを便の中に溜め込んだ状態で、そのため「再発」のきっかけを作ってしまいやすいのです。

ジアルジア再発をくり返すうちに、ルナはこの段落の冒頭に書いたように、「慢性軟便」になってしまいました。主治医が、ジアルジアによって腸管に炎症が起きているのではないかと、ステロイド少量を用いてみると、通常の下痢治療ではなかなか改善されなかったルナの症状が目に見えて良くなりました。このことから、ルナの症状は“広い意味での”猫のIBDではないかと説明されました。(上の段落でも書いたように、この場合は、腸に炎症が起きている症状の総称という意味です)

ルナの症状は、軟便のみであり、嘔吐や血便は無し。食欲は相変わらず旺盛で、体重減少もなし。ステロイドにしても、ごくごく少量で効くという、症状としてはきわめて軽度(あるいは初期)のものでした。そのため、主治医と話し合い、猫にとって負担となるバイオプシーをしてまで、病名の確定診断に進む必要は、この時点では無いということで合意しました。

この時点で、主治医からは、フードをアレルギー対策用の療法食に完全に切り替えることを勧められました(前出の吉内病院長も“軽症なら低アレルゲン食を与えて様子を見る”と書かれています)。我が家では、これまでずっとナチュラルフードにこだわってフードを選んできたので、療法食への完全切り替えには、正直抵抗がありましたが、とにかく一度療法食にトライしてみることにしました。

結果、ルナのウンチは劇的に改善し、その後ステロイドも減薬していき、最終的にはステロイドも整腸剤も一切使わずに、子猫時代と同じような見事なかりんとウンチが出るようになりました。体調も、これまで以上に良さそうです。

ルナがまだ若い猫だということ、そして症状がごく軽度だったことをふまえ、私達としては、できれば今後は(お腹の状態が完全に落ちついたら)、アレルギー対策用療法食→アレルギー対策用の一般のフード→良質な一般のフード、に切り替えていければいいなと思っています。が、いずれにしても、「猫のIBD」のことは常に念頭において、慎重にケアしていこうと思います。