◇CSパ・リーグ ファイナルステージ<第3戦>楽天2−0ロッテ
ロッテに完封勝利し、嶋(左)と抱き合って喜ぶ美馬=Kスタ宮城
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プロ野球パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)は19日、Kスタ宮城でファイナルステージ(6試合制)の第3戦が行われ、楽天は2回に嶋の左翼線二塁打で挙げた2点を美馬が4安打に抑えてプロ初完封で守り切り、ロッテを2−0で下して対戦成績を2勝1敗とした。楽天はリーグ優勝による1勝のアドバンテージがあるため、20日の第4戦に勝つか引き分けると、球団創設9年目で初の日本シリーズ進出が決まる。第4戦の予告先発は楽天が辛島、ロッテが松永。
ビックリ仰天のゼロ封劇だ。最後の打者を左飛に打ち取ると、マウンド上の美馬は何度もグラブをたたいた。CS突破に王手をかける快投。「まさか、こんなときにやれるとは」。誰よりも自身が驚いた。レギュラーシーズンで1度も経験のない完封勝利を大一番でやってのけた。
「疲れましたけど、気持ちいい。最後までマウンドに立っていられて、幸せでした」。ベンチ前では星野監督の手荒い祝福。「よく頑張った」。右手を引っ張られ、左手で頭をガッシリつかまれた。「怒られたとき以外で初めてたたかれたような気が…」。これも初めてのゼロ封の儀式。すべてが快感だった。
これまでにもチャンスはあった。昨年6月11日のDeNA戦では9回に被弾。指揮官から「もったいないなんてもんじゃない」と叱責され、「もう一生、完封できないんじゃないか」とふさぎ込んだこともある。
この日は違った。イヌワシ軍団では数少ないシュートの使い手。「当たっても仕方がない」と右打者の内角をえぐり、外角には丁寧に変化球を集めた。自身最多の128球。三塁を踏ませず、9つの「0」を並べた。
順風満帆の野球人生ではない。茨城・藤代高から中大、さらには社会人の東京ガスと進み、2011年にドラフト2位で入団。身長169センチの小柄な体だが、躍動感あふれる投球が評価されていた。しかし、3度の手術を受けていた右肘にはボルトが入っていた。
美馬が「モヤモヤした感じ」と表現する慢性的な痛み、違和感は現在も残っている。昨季8勝を挙げて飛躍が期待された今季も再三の離脱を味わった。レギュラーシーズン最後の登板となった4日の西武戦でも、変調を感じて3回途中で降板。「まさか投げさせてもらえるとは思っていなかった」というCSで、“同期入団”の指揮官に最高の恩返しをした。
伏兵で大きな1勝をもぎとった。星野監督も賛辞を惜しまない。「今年一番じゃない。入団以来一番だ。やりゃあ、できる!」。さあ、球団初の日本シリーズに王手。イヌワシ軍団の快進撃は、まだ終わらない。 (井上学)
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