<< 2008年02月
123
45678910
11121314151617
18192021222324
2526272829

柔道の山下泰裕氏がアメリカを訪問する――日本柔道の国際性

2008/02/20 00:50

 

日本柔道界の指導者、山下泰裕氏がワシントンを訪れます。


  山下泰裕(やました・やすひろ)

柔道家+国際柔道連盟教育・コーチング理事+日露賢人会議議員1957年、熊本県生まれ。東海大学大学院卒業。全日本選手権9連覇、ロサンゼルスオリンピック無差別級金メダルほか、タイトル多数。
 
このワシントン訪問はアメリカの柔道界の要望や在留邦人の関心を受ける形で在米日本大使の加藤良三氏が動き、外務省のプロジェクトとして実現します。
山下氏はワシントンでは2月21日に到着してすぐ、日本広報文化センターで一般向けの講演と柔道の実技の披露、22日には地元のアメリカの小学校を複数、訪れ、日本商工会議所の昼食会で講演をします。

そして柔道という観点からのメインのイベントとして23日にほぼ1日を費やして、「ジョージタウン大学・ワシントン柔道クラブ」で柔道の実技講習会を開きます。この講習会へのアメリカ側の熱い反応をみると、山下氏の世界柔道界での人気のほどがうかがわれます。講習会はジョージタウン大学の大きな体育館を会場としますが、防火規則などの関連で参加を一応、100人に限りました。また資格も黒帯、茶帯以上と制限しています。それでもなお応募が全米の各地から殺到し、あっというまに定員に達してしまいました。その応募の顔ぶれがまた実に多彩、広範で、ウィスコンシン州などという遠隔地からもやってくるというのです。さあ、熱気に満ちたイベントとなることでしょう。

ここで痛感させられるのも、山下氏の個人の魅力はまた別として、日本が主導する柔道へのアメリカ側のきわめて強い関心です。日本側からみれば、日本で生まれ育った柔道の対外発信、そして国際的な普遍性ということになります。

以下は日本大使館の一部である「日本広報文化センター」での山下泰裕講演会の案内です。

Japan Information & Culture Center, Embassy of Japan Presents:

Rei!

Respect and Discipline on the Judo Mat

Lecture by Yasuhiro Yamashita,

Gold Medalist 1984 Olympics

Thursday February 21, 6:30pm

In the JICC Auditorium

The JICC is proud to present a lecture by legendary judo-ka Yasuhiro Yamashita. Winning all of his matches outright by ippon, Mr. Yamashita earned the gold medal in the judo men’s open division at the 1984 Summer Olympics in Los Angeles. He also has won four gold medals at the Judo World Championships.  After retiring from competitive judo with a record of 203 consecutive wins, Yamashita, an 8th degree black belt, is now engaged in training young judo-ka worldwide. He has been utilizing judo to promote cross-cultural interaction throughout Asia, the Middle East, Russia and North America.

 In conjunction with visits to schools and universities in the DC area, Mr. Yamashita, who is internationally renowned as one of the strongest judo-ka in history, will give a lecture at the JICC about rei or respect, which is the most fundamental element of judo. Following the lecture there will be a demonstration by two of his students who have competed in all-Japan judo championships.

This event is free and open to the public.  Reservations are required.

Please RSVP to jiccrsvpwinter08@embjapan.org

Seating is limited and granted on a first come, first served basis

Japan Information and Culture Center, Embassy of Japan3 Lafayette Center1155 21PstP St NWWashington DC 20036202-238-6949www.us.emb-japan.go.jp/jicc



なお山下氏と柔道の国際性については同氏が5年ほど前にワシントンを訪れた際にも、いろいろ話を聞いて、コラム記事を書きました。以下に紹介します。   


【緯度経度】伝統と国際協調柔道の模索 ワシントン・古森義久
2003年08月10日 産経新聞 東京朝刊 国際面


 ワシントンを七月末に訪れた柔道の覇者の山下泰裕氏から世界の柔道への抱負やジレンマを聞く機会を得た。山下氏の思索が日本の固有の価値観や文化を異世界にどう調和させ、発展させるか、という点で世界での日本の国のあり方そのものの模索とそっくりなのがおもしろかった。

 東海大学教授の山下氏はこの九月から国際柔道連盟の理事となることが決まった。教育・コーチング担当理事として柔道の国際的な普及に責任を持つ。この新任務に備えるため同氏は米国で一カ月、英語研修と国際交流に専念することにしたという。東海大学での後輩でニューヨーク在住のユーゴ出身スポーツコーチ、ラドミール・コバセビッチ氏宅を拠点としたが、加藤良三駐米大使やワシントン柔道クラブの招きで首都を初めて訪れた。

 加藤大使は日米交流の観点から全米柔道選手権で活躍したベン・キャンベル上院議員、東京在勤時代に柔術や柔道の特訓を受けたトーマス・フォーリー元駐日大使、静岡在住時代に各種の武道を学んだマイケル・グリーン国家安全保障会議日本・朝鮮部長などを招き、山下氏を囲む集いを開いた。

 山下氏は堅実な英語でキャンベル議員らと柔道に限らず、教育、体育、自己鍛錬から各国の価値観、日米関係にいたるまで語りあったという。

 山下氏は連邦議会や国防総省にも招かれた。国防総省ではペンタゴンの機能のあらましを見学した後、9・11テロ(米中枢同時テロ)の旅客機突入場所に作られたチャペルを訪れたり、ベテラン宇宙飛行士のケビン・チルトン空軍少将と懇談した。9・11テロについては山下氏はハイジャックされた旅客機内でテロリストに立ち向かった乗客のジェレミー・グリック氏が米国の柔道家だったことに特別の関心を抱いたという。その旅客機は中枢破壊テロには失敗して、墜落した。

 山下氏の三日間の首都滞在の最後はワシントン柔道クラブでの指導だった。同氏はここでもすべて英語で二時間半、百人ほどの米国柔道家たちに技を説明し、稽古(けいこ)への心構えを語った。引退して十八年とはいえ、滑るように動き、流れるように投げる練達は満場を魅了した。日本人がみせる日本の技量をこれだけ多数の米国人がこれだけ熱心に学ぼうとする光景はみた記憶がなかった。

 山下氏がいまこうした国際体験を改めて重ねるのも、九月からの新任務で諸外国代表との厳しいやりとりが予測されるからだという。

 世界の柔道も基本的にはまだまだ日本スタンダードである。多様な技の内容も種類も日本で長年発展してきたままが範だし、用語も技の名はもちろん、「始め」「待て」まで日本語が共通語なのだ。試合で相手に丁寧に礼をするという精神も日本基準といえるだろう。

 だがそれでも日本基準へのチャレンジは絶えない。古くは試合でのポイント制やカラー柔道衣の導入も日本本来の方式の変革を外国から求められた結果だった。なにしろ全世界百八十カ国に広まった競技だから考え方も多様をきわめるのだ。

 山下氏によると、最近では柔道をより広めるために用語を英語にするとか、テレビ放映を多くするために、礼を薄めて選手が喜怒をあらわにすることを許す、という案が外国から出されている。日本の伝統だけを固持していると、国際的な魅力を失い、五輪からも、テレビからも、やがては背を向けられる危険がある。かといって外国の求めるとおりに変えてしまえば、柔道のなかの日本までが失われる。山下氏のジレンマはこんな点にあるというのだ。

 日本の国のあり方も外部からの制度やアイデアをあまりに広範に採用すれば、古きよき日本が失われる。かといって日本独自の慣行ばかりを固守すれば、諸外国との国際協調を失う。とくに経済ではグローバル・スタンダードの拒否は効率の低下につながってしまう。どこに調和点を求めるかは山下氏の模索と同じだろう。

 ただし柔道が日本から世界に出ていっての対応を問われるのに対し、日本の国のあり方は世界から入ってきた事物への対応を問われるという違いはある。

 山下氏自身はこの模索への当面の指針として、柔道の礼節、つまり教育的価値と、あくまで一本勝ちを至上とする実技規範とを守ることだけは譲れない、と考えているという。

 「柔道を真に国際的な競技として確立するには日本の伝統部分をもある程度、変えねばならないのは自明だと思います。しかしこの二点だけは変えてはならない、というのが私の少なくともいまの確信です」

 山下氏は意外な柔軟性をにじませて語るのだった。 ((終わり)

この写真は山下氏とロシアのプーチン大統領との柔道交流の光景です。

カテゴリ: 世界から    フォルダ: 指定なし

コメント(29)

コメント(29)

コメントを書く場合はログインしてください。

 

2008/02/20 03:03

Commented by 八丁堀 さん

こんばんは。 今、日本は夜中なのですが寝れなくて彼方此方に足跡つけてます。

柔道 高校時代の必修科目でした。 山下さんは私より9つ?年上だと思うのですが、よく斉藤選手と争っていましたね。
斉藤さんも素晴らしかったのですが、山下さんは顔立ちが優しかったのでついつい「山下頑張れ!」ってTVの前で応援していた頃を思い出しました。
五輪か世界選手権かどちらか忘れたのですが、足を骨折?しているのに優勝したのじゃなかったですかね?
その時は家族中で喜びました。
「世界の山下」 日本が世界に誇れる人物の一人ですね。

山下さんが現役でご活躍していた頃、あの頃は米ソの冷戦だったのですが、思えば日本が1番平和だったのですね。

先が思いやられるご時勢なので、女々しいかな最近学生時代の曲ばかり探しては聞いてばかりいます。

 
 

2008/02/20 03:05

Commented by 八丁堀 さん

>聞いてばかりいます。

すみません 「聴いてばかりいます」  ですww

 
 

2008/02/20 03:27

Commented by 古森義久 さん

八丁堀 さん

山下氏が足を負傷しながら優勝したのは1984年のロサンゼルス五輪でした。
相手はエジプトのラシュワン選手、この人はいまも山下氏と親交があります。ラシュワン選手が山下氏の負傷を知り、その足をあえて攻めなかったという話は伝説のように語り継がれています。

どうぞ、ゆっくりおやすみください。

 
 

2008/02/20 09:51

Commented by higuma1021 さん

かつては命懸けで相手と戦い、敗北=死であるためにどんな手を使ってでもといった武道の時代もあったでしょう。
実際の戦闘が無くなった時代には、「いつ・いかなる場所」で磨いた武道を使うのかを想像しながら訓練していかなくてはならないようになり、そこから心の中を磨く日本独特の武道の基盤が出来たのかと思います。
武道家の優れた人は、おしなべて優しい。なぜならば自分を含めた人間や世界そのものを愛せるからだと考えます。
山下さんはその中で譲れないものをあげられたのですね。
正に、そこにこそ日本武道の根本があり、そこを無くせば無明時代の勝者絶対主義になってしまいますね。

ラシュワン選手が未だに私や多くの日本人の心に残るのか。
そこに、柔道を通じて人が心の中で望むものがあったからだと思います。

 
 

2008/02/20 11:59

Commented by 古森義久 さん

higuma1021 さん

好意的な洞察に基づく、優しいコメントをありがとうございます。
もうすぐワシントンにくる山下氏にみせたいような言葉の数々でもあります。

 
 

2008/02/20 13:09

Commented by umejum さん

古森様,こんにちは。 

礼に始まり礼で終わる,勝っても負けても両者美しくあるべきとする精神があればこその発展だったと思うのですが。 ご紹介のパンフを拝見して,アメリカでは相当理解されているようで嬉しいです。 でも世界的に勝利至上主義が蔓延するのを食い止めるのは,なかなか大変なのでしょうか。。。 

美学だけに埋没せず,でも譲れないところはしっかり護る。 前回の選挙で負けたのは残念でしたけど,山下さんはやっぱり適任なんじゃないかと思いました。 

ところで今回の人気の催しに古森さんもご参加ですよね? いいなぁ(笑)

 
 

2008/02/20 13:47

Commented by 古森義久 さん

umejum さん

日本人の立場からの含蓄の深いコメントをありがとうございます。 

はい、今回の催しのいくつかに参加させていただきます。
でも受け入れ側の裏方的な仕事の部分にも加わっているので、結構、労働量は多いですよ。
しかし5年ほど前に山下氏のワシントンでの柔道講習会があり、実は私も柔道着で参加し、いざというときの通訳を頼まれたのですが、山下氏がほとんど一人で英語で説明をしてくれたので、こちらはラクでした。
その際はアメリカ側の黒帯が100人ぐらいずらりと並び、礼儀正しく山下氏の実技説明に静かに耳を傾ける光景は壮観でした。

今回は東海大学の若手OB3人がついてきます。
アメリカ側でも山っ気のある柔道選手がいて、世界のヤマシタに稽古を挑み、攻めまくって、一瞬でも膝でもつかせれば、子孫への自慢の語り草にしようなんていう場合があります。
いくら山下師範でも50歳では現役選手と猛烈な稽古はもうしませんから、その同行の3人が自由な乱取りの部分はすべて代行するわけです。

 
 

2008/02/21 00:05

Commented by 古森義久 さん

hoisassa さん

山下・ラシュワン戦の真実はあなたが書かれた描写のほうが確かに正確ですね。とくに<<--それだけでもフェアだった>>という点は重要だと思います。
ありがとうございました。

 
 

2008/02/21 00:55

Commented by RAM さん

古森様、あなたも、無理な稽古はご自重ありますよう・・・(^^)

 
 

2008/02/21 03:45

Commented by 古森義久 さん

RAM さん

はい、日頃、大けがをするような愚かな事態は避けたいと思って、きわめて慎重に練習の相手も選んでおります。

 
 

2008/02/21 18:19

Commented by sponta さん

お久しぶりです。

競技柔道と精神柔道を分ける。それしかない時期に来ていると思います。
一刻もはやく、精神柔道の世界大会をやるべきでしょう。

勝てばいい。という戦国時代的な柔道はあっていい。ただし、江戸時代のような、実戦から離れた柔道もあっていいということです。
精神柔道の世界大会が存在し、姑息な競技柔道との違いが明確になることが、非言語的な柔道精神の明確化であり、日本精神をユニバーサルスタンダードにする近道だと考えます。

政治的な力学で日本が影響力を行使できなくなったのなら、それ以外に道はないと考えます。競技柔道が今後さらに進んでいけば、技としての美しさを失い柔道としての魅力を失うことは目に見えています。

「日本で尊敬される柔道」と、「世界で勝てる柔道」という二つの規範があるために、日本選手は混乱して、世界で負けるのであって、最初から、ダブルスタンダードにしてしまえば、混乱がないし、選手は、二つの道のどちらかを選択すればいいのだと思います。

もし、山下さんにお会いすることがあれば、そのようにお伝えください。
妥協の産物、折衷主義こそ、潔しをモットーとする柔道精神に反する。と。

 
 

2008/02/21 21:56

Commented by セアラ小太郎 さん

>ただし柔道が日本から世界に出ていっての対応を問われるのに対し、日本の国のあり方は世界から入ってきた事物への対応を問われるという違いはある。

たしかにそうですね。
日本から移民でアメリカやここブラジルに行った人たちは、当然自分たちで現場で対応しながら自分たちのアイデンティティを守りつつ、必要に応じてそのあり方を変えて行った部分もあったですし、一方で日本にいる人たちは、海外からの情報を取り入れながら対応するというあり方だったので、当然物事に対する基準は違います。

が、これからはやはり日本からもっと積極的に海外に出て行って、色々なことをもっと学びながら調和点を模索し、時には日本が積極的にイニシアチブをとることも必要なのではないでしょうか?

ちょうど今年は「日本移民100周年」を記念して、『日本・ブラジル交流』と言うことになっているのでこちらでも、日本からもっと多くの人が来て(特に政府・財界など、普段自分たちで現地の実情を見ることがない人たちに来てもらって)いろんなことを知ってもらいたいと持ってます。

もちろん『産経新聞』など日本のマスコミにも、もっと目を向けてもらえたらと思ってます。

*このエントリーとは関係ないかも知れませんがトラバ貼らせていただきますのでご一読ください。

 
 

2008/02/22 00:21

Commented by 古森義久 さん

spontaさん

おもしろいコメントをありがとうございます。
とくに下記に関心を惹かれました。


<<「日本で尊敬される柔道」と、「世界で勝てる柔道」という二つの規範があるために、日本選手は混乱して、世界で負けるのであって、最初から、ダブルスタンダードにしてしまえば、混乱がないし、選手は、二つの道のどちらかを選択すればいいのだと思います。

もし、山下さんにお会いすることがあれば、そのようにお伝えください。
妥協の産物、折衷主義こそ、潔しをモットーとする柔道精神に反する。と。>>

山下氏とはワシントンで一緒に過ごす時間がかなりありそうなので、以上の点、提起してみたいと思っています。同様の点はこれまでも多くの関係者により指摘はされていますが、あなたの表現へある部分の核心をついているように思いました。

 
 

2008/02/22 00:27

Commented by 古森義久 さん

セアラ小太郎 さん

ブラジルの日系人ということであれば、私も日本ブラジル修交の記念にサンパウロで開かれたシンポジウムに招かれたことがあります。二宮正人教授らからの招待でした。ブラジル日系人のアイデンティティーというのも、日本を考える際の興味ある指針ですね。

ブラジルではご存知のように柔道がきわめて盛んです。柔道人口ではフランスについで世界第二位と聞いています。強い選手も多く、世界選手権では日本の井上選手を破った例もありました。

 
 

2008/02/22 17:06

Commented by sponta さん

古森様。リプライありがとうございます。

日本と西洋社会の根本的な乖離は、日本が多神教的多元論だが、西洋は一神教的二元論だということです。司馬遼太郎氏は、「西洋は、ギリシア哲学以来、絶対という唯一の虚構を探求してきた」(「この国のかたち」)というようなことを言っています。
自由:freedomという概念も二元論的概念であり、最近では、その窮屈さに西洋人も気がつき、多様性:diversityという言い方になっています。

オリンピックを絶対視してきたことも、近代スポーツの窮屈さのひとつ。クーベルタン男爵はプロスポーツの対称物としてオリンピックをつくったのに、ブランデージ氏の引退以降、それが一つになり混乱している。
ならば、山下氏が多様な選択肢を生み出すことも悪くないと考えます。

武道というものは、ゴルフ同様、審判の要らない競技。将棋同様、「参りました」と、言った方が負け。そんな当事者が勝ち負けを司るスポーツです。ゴルフもオリンピックに種目としてない。それでいいじゃないですか。

 
 

2008/02/22 17:53

Commented by soudenjapan さん

全盛期の山下泰裕さんを基準に考えたらいいんじゃないでしょうか。伝統的精神と技を身につけた20代の頃の山下さんが、タイムスリップして、仮に新ルールの世界大会に出場するとして、そこで御自身が「もちろん自分なら勝てる。」とおっしゃるのなら、少々ルールが変わっても本質的な変更はないと判断できます。そうではなく「優勝できる気がしない。」と感じられるのなら、何かゆずってはならない本質的な変更が加えられたことになります。その場合は、世界の柔道家に対して、彼らの憧れである「山下泰裕」が存在し得ない柔道になってよいのか、問う必要がでてくると思います。

 
 

2008/02/22 22:34

Commented by 古森義久 さん

soudenjapan さん

<<全盛期の山下泰裕さんを基準に考えたらいいんじゃないでしょうか>>

というのは、おもしろい発想ですね。ご本人に聞いてみたいところです。

なお山下氏は昨夜、ワシントン市内で200人ほどの聴衆を前にスピーチをして、大好評でした。

 
 

2008/02/23 12:57

Commented by 古森義久 さん

hoisassa さん
>ラシュワン選手が山下氏の負傷を知り、その足をあえて攻めなかったという話は伝説のように語り継がれています。

これはマスコミが過剰に作り上げた美談ですね。


以上の点について、山下氏自身がワシントンで何度か、語りました。
その話を総括すれば、「ラシュワン選手は普通に攻めてきたが、私の負傷した足を狙って攻めるということはなかった。もし本当にそうしたければ、できただろう。だから彼はフェアだといえる」ということでした。

 
 

2008/02/23 13:01

Commented by 古森義久 さん

spontaさん

<<「日本で尊敬される柔道」と、「世界で勝てる柔道」という二つの規範があるために、日本選手は混乱して、世界で負けるのであって、最初から、ダブルスタンダードにしてしまえば、混乱がないし、選手は、二つの道のどちらかを選択すればいいのだと思います。>>


上記のご指摘について、さきほど山下氏の見解を直接に尋ねてみました。
その答えはおおむね、以下のようでした。

「日本で尊敬される柔道」と「世界で勝てる柔道」が異なってきたことはそのとおりです。しかし「日本で尊敬される柔道」は「世界でも尊敬される柔道」です。ただし勝たねばならない。だから日本としては「日本で尊敬される柔道」の範疇で、世界で勝てるように努め続ける以外にないでしょう。

 
 

2008/02/23 13:05

Commented by 古森義久 さん

soudenjapan さん

<<全盛期の山下泰裕さんを基準に考えたらいいんじゃないでしょうか。伝統的精神と技を身につけた20代の頃の山下さんが、タイムスリップして、仮に新ルールの世界大会に出場するとして、そこで御自身が「もちろん自分なら勝てる。」とおっしゃるのなら、少々ルールが変わっても本質的な変更はないと判断できます。そうではなく「優勝できる気がしない。」と感じられるのなら、何かゆずってはならない本質的な変更が加えられたことになります。その場合は、世界の柔道家に対して、彼らの憧れである「山下泰裕」が存在し得ない柔道になってよいのか、問う必要がでてくると思います。>>

以上のコメントの要点を山下氏本人にぶつけてみました。
それに対する回答は大体、以下のとおりでした。

「チャンピオンというのは、常にそのときのルールを知り、それに従い、克服し、優勝する選手ということです。私も昔のルールといまのルールの差はよく知っています。チャンピオンというのは、そのときの状況にうまく適合し、なお勝ち抜くわけです」

だからいまのルールであれば、それなりに対応し、適合していくだろう、
ということでした。

 
 

2008/02/23 22:47

Commented by hotaka さん

古森様:

実は私は少林寺拳法の拳士の一人でもあります。
以前、強盗のたとえ話を紹介しましたが、少林寺拳法開祖である宋道臣の経験話を一般向けに多少わかりやすく修正したものです。

少林寺拳法連盟現会長の新井先生と山下氏との対談(2007年)がございます。参考になれば幸いです。
http://www.shorinjikempo.or.jp/record/2007/070330_1_1.html

 
 

2008/02/23 23:16

Commented by hotaka さん

失礼しました。
上で、あわてて開祖の名前を打ち間違えました。
開祖の名前は宗道臣です。
多くの方にとっては関係ないでしょうが、私自身が許せなくて。

 
 

2008/02/24 13:45

Commented by 古森義久 さん

hotaka さん

おもしろい情報をありがとうございます。
一段落したら読ませていただきます。
その対談のこと、明日も山下氏に会うので、尋ねてみましょう。

 
 

2008/02/26 18:48

Commented by さくらの こころ さん

古森さん

次のエントリーに先にコメントをしてしまいましたが、こちらのエントリーにTB(すみません、2回も)させて頂きました。

最近、グローバル・スタンダードという言葉を聞くと、身の毛がよだつ思いがしてきます。柔道はあくまでも日本の武道であり、それが国際社会に広まったことは良いことだと思いますが、勝手に一人歩きして礼も何も精神が抜け落ちては、柔道と呼ばないで欲しいです。山下氏は辛いお立場だと思いますが、譲れないものは譲れないという姿勢を貫いて頂きたいと応援しています。まぁ、何もできないのですが…

 
 

2008/02/27 02:16

Commented by 古森義久 さん

さくらの こころ さん

ほんのご参考までの話です。

山下氏のワシントン地区の活動には米側の公立の小学校や日本語学校を訪れ、柔道の実技をみせ、講演をすることも含まれていました。その一貫として23日の土曜日の朝には「継承センター」という名の日本語学校を訪問しました。ここでは生徒は小、中学生50人ほど、父兄も50人ほど集まっていました。

ワシントン地区には日本政府から補助を受けたメインの日本語学校とは別に継承センターという名の日本語学校があります。継承というのは日本の言葉や文化を継承していこうという意味だそうです。
二つの学校の違いは、前者が日本人の海外駐在者の子供たちがほとんどで、みな必ず数年で日本に帰り、日本の教育を受けるのに対し、後者は両親が日米両国人だという子供、あるいは両親が日本に駐在して日本語を覚えた子供が主体、つまりこのままアメリカに住み続ける、基本的にアメリカの子供たちです。

その継承センターで山下氏は「自分の人生最大最高の体験はオリンピックで優勝し、日の丸をみて、君が代を聞いたときでした」と淡々と語りました。
そして子供たちは山下氏が帰るときに、「プレゼントです」と述べて、なんと全員で君が代を歌いました。アメリカ人の子供たちに自国の国歌を斉唱されて、山下氏も最初はびっくりのようでしたが、やがて真剣な表情になって、自分も少し口ずさんでいるようでした。

 
 

2008/02/27 08:42

Commented by さくらの こころ さん

古森 さん

ありがとうございます。救われました… 思わず涙が溢れてきました。少し私の話をさせていただきます。(お許しください。)

私には、日米の国籍を持つ2人の息子(7歳9歳)がいます。長男が就学年齢に達するとき、あれこれ調べ、悩んだ結果、領事館に相談の電話をしました。日本語学校(古森さん述前者)には地理的に通学が困難なこと、民間の施設もないこと等を説明した上で、1年生の教科書を頂きたいとお願いしました。その対応は冷たかったです。部数の関係で、永住資格者の子どもには配布しない。領事館に相談されても困る。アメリカ人になるんでしょう?っという具合でした。まだ日本国籍を放棄すると決めたわけではないのに…

子供たちは日本が大好きで、自分は日本人だと思っています。(アニメやDS等に因る所が大きいですが…)幸い日本にもお友だちがいるし、勿論私の家族もいます。彼らの意思で国籍を選択するまで、私が出来る限りのことをしてやりたいと思っていますが、現実は悩むことばかりです。子育ては本当に親育てです。(笑)

継承センターのこと調べてみます。ワシントン地区に住みたくなってきました。古森さんのように、私も何か一つでも「道」が身につくよう今後も努力していきます。

最後まで駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

 
 

2008/03/03 00:37

Commented by 古森義久 さん

しゅん さん

高校時代の授業とはいえ、しゅんさんが柔道をされていたとは、意外ですね。
「畳の冷たさ」とは懐かしい限りです。子供のころ、厳冬の早朝の道場寒稽古では畳が凍りついたように冷たく、足が感覚麻痺になったこと、よく覚えています。
でもいまでは畳も冷たくないんです。この1月の寒稽古、母校の道場に午前5時に行きましたけど、暖房が効いていて、畳も冷たくなかったです。

福田敬子さんはアメリカの柔道界でも有名です。私は直接、お会いしたことありませんが、私のワシントンでの柔道の大先輩、宮崎剛氏らはよく存知あげ、接触していたようです。

ところでしゅんさん、あなたは女性なのですか。
まさかとは思うけど、「柔道部の主将殿に執拗に付きまとわれ」という記述があったので、そんな疑問を抱きました。

 
 

2008/03/03 00:46

Commented by 古森義久 さん

さくらの こころ さん

ご参考までですが、継承センターを再訪しました。
山下氏が訪れたちょうど1週間後の3月1日です。
この学校でオープンハウスのような公開授業をするので、どうぞ、という学校側の越谷ご夫妻らからの招待でした。
山下師範に同行して、2月23日の訪問では柔道の実技をみせた東海大学柔道部若手の紫牟田武徳、稲葉将太両選手も同行しました(この二人はワシントン地区での柔道指導と3月9日のニューヨークでの大きな国際大会出場のため残っています)。
子供たちは二人の柔道家をよく覚えていて、大歓迎でした。
日本大使館の文化担当の北野充公使も招かれ、子供や父兄に激励の言葉を送っていました。
この学校はメインの日本語学校と異なり、アメリカで、アメリカ人として育っていく子供たちが大多数です。だから日本語を高い水準まで学び、保つというプレッシャーはありません。その結果か、きている子供たちはみな楽しそうでした。プレッシャーのない語学教育への賛否もあるでしょうが、私はここまでして日本語を学ぼう、忘れまい、とする子供や父兄の姿勢にきわめて強い好印象を受けました。

 
 

2008/03/03 01:24

Commented by 古森義久 さん

しゅん さん

敏速なお返事をありがとうございました。
まさに、まさか、ではあったのですが、失礼な疑問(この表現は女性に失礼かな)でしたね。

窓に鈴なりの女子高生に手を振りながらのランニングとは、カラフルな青春ですね。それに続く記述は信じませんけど。