宇宙葬:GPS付き19万5000円 日本でも開始
毎日新聞 2013年10月01日 11時19分(最終更新 10月01日 13時22分)
アプリで宇宙を感じながら“野辺送り”できる「宇宙葬」のサービスが1日、日本で始まった。米サンフランシスコのベンチャー企業エリジウムスペース社(トマ・シベ最高経営責任者=CEO)が、従来の宇宙葬の半分以下の1990ドル(約19万5000円)で実現した。
米国では1997年に初めての宇宙葬(ロケットで遺灰を軌道上に打ち上げる)が行われた。「今までは宇宙に遺灰を送ることが目的だったが、新しい葬送の儀式として宇宙を感じながら故人をしのぶアプリを開発した」とシベCEO。
1グラムの遺灰をカプセルに納め、約100人分をまとめて打ち上げる。カプセルを載せた人工衛星が地球周回軌道に乗るまでは従来と同じ。同社は新たに、スマートフォンおよびタブレット向けの無料GPS(全地球測位システム)アプリを開発、その現在位置を確認できる。数カ月から1年で人工衛星は大気圏に再突入し、流れ星となって燃え尽きる。その時期も情報提供する。
今年8月から米国でサービスを開始。申し込みはホームページ(http://www.elysiumspace.com/、英文。日本語版制作中)。日本の葬儀会社との提携を進めており、最初の打ち上げは2014年夏を予定している。【内藤麻里子】
◇葬儀のあり方多様化
葬儀のあり方は日本でも多様化している。札幌市中央区のNPO法人「葬送を考える市民の会」(会員数約570人)は、高額な費用がかかる旧来の葬儀への疑問から、1997年に設立された。粉末状にした骨を海にまく「散骨」や、趣味の品々を祭壇に飾るような無宗教の葬式をコーディネートしてきたが、当初はタブー視する風潮もあったという。
しかし、最近は生前に自分の葬儀を準備する人も多く、全国から会員が集まるようになった。木下に遺骨を埋葬する「樹木葬」を手掛けたり、遺骨の一部をブレスレットやペンダントにしてくれる業者も登場しており、同会理事の佐藤朋子さん(57)は「宇宙葬も多様化の一環。抵抗なく受け入れる人も多い」と見る。その上で「大事なのは本人と遺族の意向。葬儀のあり方は決まりがあるようでないので、納得のいく形で送り出すのが一番だ」と話す。
一方、死生学が専門の鈴木光・豪シドニー大学研究員は、「日米共に、宗教に縛られず自分らしい死への道筋を考える動きが広がっている。その時の新しい選択肢の一つになる」と話している。【和田浩幸】