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(朝鮮日報日本語版) 【コラム】歴史問題の疲労感、日本は言及する立場にない

朝鮮日報日本語版 10月19日(土)12時4分配信

(朝鮮日報日本語版) 【コラム】歴史問題の疲労感、日本は言及する立場にない

(写真:朝鮮日報日本語版)

 ギリシャは自国のことを「文明の父」と呼ぶほど、ヨーロッパ文明の発祥地だというプライドを強く持っている国だ。だが、そのギリシャも経済危機の前にはメンツも何もないようだ。ギリシャの主要日刊紙はこのほど、「ナチス賠償金」に関するギリシャ政府の報告書をスクープ報道した。アントニス・サマラス首相が直接関与した機密報告書がそっくりそのまま新聞に掲載されたのだ。

 ギリシャは2010年に国家破綻の危機に陥った後、国外から2400億ユーロ(現在のレートで約32兆円)に上る救済金融を受け、かろうじて国家財政を賄っている。ギリシャに対する救済金融を主導しているのがドイツだ。ギリシャは現在、「ドイツの許可」がなければ国家予算を組むことすら難しい状況だ。ドイツのメルケル首相は機会があるごとにギリシャ全体が倹約に努めるよう求めている。ところが、街中を埋め尽くすギリシャのデモ隊は、これまで自分たちが享受してきた福祉の恩恵を全て奪ったのがドイツとメルケル首相であるかのように攻撃している。ギリシャ政府のナチス報告書は、こうしたギリシャ国民の反ドイツ感情に油を注いだ。この報告書はあいにくドイツで総選挙が行われた日、ギリシャのメディアに大きく取り上げられた。

 報告書の内容を要約すると、ギリシャは第2次世界大戦時にナチス・ドイツから受けた被害に対する補償金を十分に受け取っていないというものだ。ナチスに食糧を奪われたためにギリシャ人30万人が餓死したのにもかかわらず、終戦後に締結されたパリ条約でギリシャはドイツ製機械など2500万ユーロ(同約33億円)しか受け取っていないと主張している。当時受け取れなかった賠償金を今受け取れば、現在の金融危機のかなりの部分が解決できるという。

 メルケル首相は総選挙を前にした状況で、ドイツ人有権者たちの反対を押し切ってギリシャを支援した。しかし、2500年近く前に「悪法も法である」と説いたソクラテスの末裔(まつえい)たちが、既に国際条約により決着のついたナチス賠償問題を再び声高に持ち出したのだから、メルケル首相も大弱りだろう。

 ドイツはこれまで、過去の歴史問題にふたをして、やり過ごすような言動をしたことがない。メルケル首相は今年1月、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)記念日に合わせ「ドイツはナチスの犯罪に永久に責任がある」と述べた。総選挙を1カ月後に控えた8月にはナチス強制収容所を訪れ「ドイツ人の大多数は当時の大虐殺に目を閉ざし、ナチス犠牲者を救うための行動を何もしなかった」と述べ、過去の歴史問題について重ねて謝罪した。
 メルケル首相だけでなく、これまでのドイツ歴代首相や政治指導者たちは、常にナチスの戦争犯罪について謝罪し、前世紀に起こった悲劇の歴史を繰り返さないと誓ってきた。それでも欧州各国は依然としてドイツに対する警戒を緩めず、不安を抱いている。ギリシャの例に見るように、過去の亡霊もまたドイツに付きまとっている。

 韓国と日本の間の確執に関する討議で、いつも登場するのが「過去の歴史問題の疲労感」だ。過去の歴史に関する問題が出てくると、日本側は常に「どれだけ謝罪すれば韓国は満足するのか」「(ネズミなどを運動させる)回し車のように繰り返される韓国の過去の歴史問題謝罪要求に日本も疲れた」という反応を見せる。まるで韓国が不当に過去の問題を引っ張り出してきているかのように聞こえる言葉だ。しかし、少なくとも2000年代に韓国政府から特定の過去の歴史問題懸案に対して日本に謝罪を注文したことはない。ドイツに比べれば、日本は過去の歴史問題の疲労感について言及する立場にない。現にドイツの指導者たちは誰も現在のギリシャに対して「疲労感」という言葉を口にしていない。

 韓国も「過去の歴史問題の疲労感」は同じだ。最近取り沙汰されている過去の歴史問題の悪循環は、日本の指導者たちの挑発的な言動に端を発するケースがほとんどだ。日本が回し車を回せば、韓国政府は自然に止まるまで待つしかない。それほど帝国主義時代の日本が韓国人に残した過去の歴史問題に関する傷は深く大きく、むやみに手を付けられないのだ。

 日本は今、アジアのリーダーの座を中国に奪われるのではないかと気をもんでいる。しかし、どんなに小さな地域社会でも近所の人々の同意なしにリーダーにはなれない。韓日関係に差し迫っている懸案は短期対症療法ではなく、互いの気持ちを理解しなければ解決できない問題が多い。だが、もし日本の首相が在韓日本大使館前で22年以上続いている元従軍慰安婦たちの水曜集会に来て、歴史の被害者たちに土下座したとしたら、どうなるだろうか。ドイツの首相がしたように、日本の植民地支配による被害を示した記念館の前で「日本の戦争犯罪に対するわれわれの歴史的な責任は永遠だ」と言ったら、韓国はどのような反応を見せるだろうか。日本が望んでいる国際的な地位を得るには、こうした発想やアプローチの大転換が必要な時期だ。

最終更新:10月19日(土)12時4分

朝鮮日報日本語版

 
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