「自炊」代行訴訟:複製差し止めと賠償命令 東京地裁判決
毎日新聞 2013年09月30日 20時58分(最終更新 09月30日 23時47分)
本や雑誌をスキャナーで読み取って電子データ化する「自炊」行為を請け負う事業は著作権法違反だとして、人気作家らが東京都内の2社を提訴した訴訟で、東京地裁は30日、業者側に複製の差し止めと計140万円の支払いを命じた。自炊代行を差し止める判決は初めて。大須賀滋裁判長は「著作権侵害の恐れがある」と述べた。
自炊は、タブレット端末やスマートフォン(多機能携帯電話)の普及を背景に、蔵書の保管場所の節約手段などとして広まり、代行業者も急増。作家の浅田次郎さんや東野圭吾さん、漫画家の弘兼憲史さんら7人は、港区の「サンドリーム」と葛飾区の「ドライバレッジジャパン」を提訴していた。
2社は著作者らの許諾を得ずに利用者(読者)から1冊数百円程度で自炊を請け負い、原告側は複製の差し止めと損害賠償を求めた。業者側は、著作権法が個人で利用するための「私的複製」を認めていることを根拠に「利用者の『手足』になっていただけで適法だ」と反論していた。
大須賀裁判長は「一般の読者が自ら設備を準備して電子化の作業をすることは困難。業者が利用者の管理下で複製していたとは評価できない」と退けた。
自炊代行を巡っては、大手出版社7社と作家122人が2011年9月、約100の代行業者に業務中止を求め、応じなかった業者を相次いで提訴。判決を待たずに差し止めに応じるケースが相次いだが、今回判決を受けた2社のほか4社の訴訟が同地裁で続いている。【川名壮志】
ドライバレッジジャパンの話 控訴する。愛読家にとっては不当な判決だ。
原告弁護団の話 無許諾の書籍スキャン事業が違法であると明確に示され、大きな意義がある。