ウォール・ストリート・ジャーナル 10月13日(日)10時22分配信
米検索大手グーグルは、同社サービスの利用者を広告に登場させようとしている。口コミによるマーケティング強化が目的だが、グーグルは利用者に許可を求めることは考えておらず、プライバシー保護の観点から懸念が高まることは避けられそうにない。
グーグルは11日、ホームページで、利用者の名前やプロフィール写真、利用者が投稿した評価や感想を「共有おすすめ情報」の一環として広告に表示すると発表した。来月11日から開始する。
18歳以上の利用者が、例えば自分の好みのスマートフォンを推奨したりイタリア料理店を薦めたりすると、それがグーグルの検索結果などのサイトに表示される。グーグルは同社が外部のサイトに掲載する広告に利用者情報を載せるかどうかは明記していない。
シリコンバレーの企業が運営する人気の高いサイトの多くでは、従来型のオンライン広告よりソーシャルコンテキスト(人間関係が反映された)広告のほうが役に立ち、かつ利用者にとって煩わしくないとしている。しかし、プライバシー擁護派は反対の姿勢を示していて、広告主もその有効性を全面的に支持しているわけではない。
今回の変更前でも、利用者がフェイスブックの「いいね」に相当する「+1(プラスワン)」ボタンをクリックすると、利用者のお薦めとして広告に掲載されることがある。今回の変更では、広告に表示される内容が拡大される。例えば、グーグルのアプリストア「Google Play(グーグル・プレイ)」で販売されている曲に利用者の評価が表示されたり、グーグルの交流サイト「Google+(グーグル・プラス)」に投稿したレストランについての感想が広告に表示されたりする可能性がある。
また、グーグルのアカウントを使って外部企業が提供するアプリケーションにログインすると、利用者の行動がグーグルの広告に表示される可能性がある。グーグルは対象となるアプリケーションや表示される行動、広告の掲載場所を具体的に示していない。
電子プライバシー情報センターのマーク・ローテンバーグ氏はグーグルの新たな広告戦略について「問題だと思う」と述べ、「(利用者の)同意のないまま商業的な宣伝に利用することになり、米国のほとんどの州では容認されていない」と指摘した。
グーグルは声明を発表し、「利用者のプライバシーと安全は弊社の最優先事項の1つである」として、プライバシーや安全に関する情報の開示に努めており、新しい利用規約は法律に完全に準拠していると強調した。
グーグルの初期設定では、利用者情報や利用者が投稿した評価や感想はソーシャル広告に掲載されるが、利用者は情報が広告に利用されないように設定することができる。評価や感想をいつでも変更することもできる。
現実の世界で友達からの口コミが有効だということはマーケティングで広く認識されているが、ソーシャル広告はそれをインターネット上で再現しようとするものだ。グーグルはホームページで、地図サービスの利用者が一般的な推奨リストより友達の薦めるレストランのリストに肯定的に反応する可能性があるという例を挙げている。
大手ソーシャルメディアのほとんどが利用者情報と広告の融合を始めているが、結果はまちまちだ。
ツイッターは会員のアカウント名(仮名も認められている)を広告に取り込み、その会員のフォロワーに表示している。
フェイスブックは2007年から利用者の行動(レストランに食事に出かけることや企業を後押しすることなど)と連動した広告の掲載を始め、この分野を開拓した。同社は「いいね」ボタンなど相次いで新しい機能を導入して一層の強化を図っている。
同社は広告主への配慮と利用者のプライバシー保護の両立に苦労した経験がある。09年には集団訴訟の和解条項の一環として、他のサイトでの買い物といった利用者の行動をフェイスブック上に反映させる広告サービス「ビーコン」を停止した。
プライバシー保護のほかにも、ソーシャル広告は機能するのかという疑問がある。
現在、ソーシャル広告はフェイスブックの事業の中心に据えられているが、その他の、従来型のオンライン広告の比重も高まりつつある。「いいね」のようなメッセージの価値に疑問を持ち続けるマーケティング担当者もいて、ソーシャル広告と購買行動の相関関係に関する研究が続けられている。
フェイスブックは今後数カ月のうちに、傘下の写真・動画共有サービス「インスタグラム」への広告掲載を始めるとしているが、ソーシャル広告を取り込むかは明らかにしていない。
グーグルのソーシャル広告強化について、デジタル広告会社360iの最高経営責任者(CEO)のブライアン・ウィーナー氏は、このアイデアに利用者が慣れるまでは、こうした広告を機能させるのは難しいかもしれないと話す。
市場調査会社ケリー・フェイ・グループのCEOのエド・ケリー氏は、利用者自身は薦めているつもりはなかったのに運営側が利用者のお薦めのように見せかけることがあれば、ソーシャル広告は失敗する可能性があると指摘している。
ケリー氏は「一線を越えて、利用者が本物ではないと感じるようになったら、裏目に出る可能性がある」、「越えられない一線がある」と語った。
最終更新:10月13日(日)10時22分
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