中国PM2.5:秋から深刻ナゼ? 20日は北京マラソン
毎日新聞 2013年10月19日 12時30分(最終更新 10月19日 18時44分)
中国の大気汚染の原因として注目される微小粒子状物質「PM2・5」。建国記念日に当たる国慶節(10月1日)前から北京周辺で深刻化し、「暖房のために石炭消費が増える冬でもないのに、なぜ?」と話題になっている。20日には北京国際マラソン、来年秋には北京市でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議も予定され、中国政府は対策を強化する方針。専門家からは「空気が常に清浄な環境をつくるには数十年かかるだろう」と悲観的な声が相次いでいる。【北京・石原聖】
「選手は身の危険を冒して試合に来て、ファンは声援を送りに来たがために死んでしまうかもしれない」。先月29日、テニスの中国オープンを放映した国営中国中央テレビの司会者が皮肉った。北京ではこの日、PM2・5が同国の基準値(大気1立方メートル当たりの1日平均75マイクログラム)の3倍超を記録。6段階で最悪の「厳重汚染」となり、市がマスク着用や車の利用自粛を呼び掛けたからだ。一部の高速道路は視界不良で閉鎖され、空の便にも欠航が出た。
10月5、6日に開催された米国女子プロゴルフツアーでも、スモッグが晴れるまでプレー開始が数時間遅れ、選手のマスク姿が大きく報じられた。
大気汚染は工場の排気、車の排ガス、石炭燃焼、建設工事現場のほこりなどが複合して発生する。北京大学環境科学・工程学院の謝紹東(しゃ・しょうとう)副院長は天候と地形に注目する。元々、国慶節の時期は強風が吹かず、山に囲まれた北京は大気が滞留しやすい。謝副院長は「1999年と2004年も同様に深刻だった。国慶節の連休中は北京市内で車が減ったが、高速道路は相変わらず大渋滞ですよ」と、今年に限った話ではないと語る。
環境NGO「公衆環境研究センター」の馬軍(ばぐん)主任は「周囲の環境の変化」を付け加える。08年の五輪開催を機に、北京では老朽化した工場が移転した代わりに隣接する河北省で鉄鋼産業が、天津市で石油化学産業などが急成長。北京市の人口も05年から12年にかけ530万人も増加。環境への負荷が北京とその周囲で猛スピードで強まった結果、「地域全体で発生する構図」(馬主任)へと変質し、1都市だけの問題ではなくなっているという。
石炭の消費が増える冬場には、大気汚染がピークを迎える。今年は1月12日に北京で700マイクログラム超を観測したが、中国気象局によると、PM2・5が基準値を超えた日は9月に北京で14日と、例年より10日以上増えた。天津市や河北省のほか、江蘇省や河南省でも例年より5〜10日多く汚染が常態化している。