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【社会】学徒出陣70年 遺書基に都内で創作劇 あすから太平洋戦争中に大学生らを徴兵した「学徒出陣」が始まって今年で七十年となるのを機に、戦死した学生の手記や遺書を基にした創作劇「この命果つるとも」が二十、二十二の両日、東京都内で上演される。戦争体験者と若者の交流団体「温個知新の会」が企画。メンバーの上蕨(かみわらび)博さん(81)=江戸川区=は「戦争に将来の夢を断ち切られた学生らの姿を、現代の若者にぜひ見てほしい」と話している。 (樋口薫) 温個知新の会は一昨年秋、戦没学生らの資料展示施設「わだつみのこえ記念館」(文京区)で知り合った高齢者と大学生らで設立。メンバーは二十〜八十代の約十人で、「人生の先輩に学びたい」という大学生らが「若者に戦争を伝えたい」という高齢者から、東京大空襲や兵器研究などの体験談を聞く会を開いてきた。 徴兵が猶予されていた大学生らの出陣が始まったのは一九四三年。それから七十年となる今年、会は劇の創作を脚本・演出家の鄭光誠(チョンガンソン)さん(32)に依頼した。 題材となったのは戦没学生の遺稿集「きけわだつみのこえ」に収録された特攻隊員二人の手記。上原良司は特攻前夜、遺書で戦争を批判し、「自由の勝利は明白」と記した。キリスト教徒の林市造は「賛美歌をうたいながら敵艦につっこみます」と、母への手紙をのこした。 在日韓国人三世の鄭さんは「韓国には今も徴兵制があり、学徒出陣は自分にとって身近な問題」とした上で、「彼らが命を懸けて守ろうとした未来が何だったのか、考えてもらう作品にしたかった」と説明する。会員で大学四年の安藤陽介さん(25)=千代田区=は「会での交流を通じて、戦争は決して遠い世界の出来事ではないと学んだ。若い兵士の苦悩を自分の問題として考えてほしい」と観劇を呼びかけている。 公演は二十日が墨田区の江戸東京博物館(午後二時、六時からの二公演)、二十二日が武蔵野市の武蔵野公会堂(午後一時から)で、料金は千五百円。問い合わせは上蕨さん=電090(2635)4596。 PR情報
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