〔平成10年度:研究区分B〕

生物処理活性を有する構造物に関する基礎研究

(新潟大学工学部)泉宮尊司・飯田高三・佐伯竜彦

(田辺工業株式会社)吉岡紘一

1. 研究の概要

 微生物の生理活動を利用し、水質浄化、排水処理を行う場合、さまざまな担体に微生物を保持したり、砕石を積み重ねたその間隙に生物膜を形成させて処理する散水炉床法、曝気装置により大量の空気を供給しながら微生物群を循環させる活性汚泥法で処理してきた。本研究では、一般水路や農業用水路等で特別な装置を設けることなく自然な形態のままで浄化を行ったり、あるいはその処理装置の負荷を軽減しうる生物処理活性を有する構造材について検討した。

2. 成果の概要

 トルマリンの共存するコンクリート材料に包括あるいは付着させた排水処理菌体であるEM菌を用いて都市排水路等生物処理槽を用いない一般有機排水処理の可能性を探索することから開始した。その結果、

  1. コンクリート材料単独では、EM菌の栄養源となりうる米糠や糖蜜を添加すると圧縮強度が著しく低下し、EM菌ぼかしを添加しても圧縮強度は半減した。
  2. トルマリンを加えたコンクリート材料の圧縮強度は、川砂を加えた強度と変わらなかった。
  3. EM菌の賦活化にトルマリンの効果はなかった。
  4. EMぼかしで排水処理活性はわずかに認められたが、EM原液では活性が認められず、コンクリートからのアルカリ溶出で菌体の活性が消滅することが明らかになった。

 そこで、水質浄化や廃水処理等用いられる構造材であるポーラスコンクリートに水溶性高分子であるポリビニルアルコールによる被覆処理を行い、あるいはコンクリートを一定期間屋外曝露によりアルカリ溶出させてから微生物を移植賦活化することを検討した。

 その結果、アルカリ溶出が抑えられて菌の生育による合成下水中の有機物の減少が認められた。

3. まとめ

 ポーラスコンクリート構造材に後処理が容易な水性高分子膜を生成させること、あるいはコンクリートを一定期間屋外曝露してアルカリ溶出を抑止した後、排水処理菌体を付着させることにより特別な装置を設置しないで自然な形態で汚染浄化を行い、あるいは装置への排水導入に先だつ前処理を行って装置の処理負荷を軽減しうる可能性のある構造材を開発した。