垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを使った日米共同訓練が日本国内で初めて行われたが、沖縄県民の米軍基地負担が抜本的に軽減されるとは言い難い。危険を全国に拡散するだけなら許されない。
共同訓練が行われているのは琵琶湖西岸の滋賀県高島市にある陸上自衛隊饗庭野(あいばの)演習場だ。陸自と米海兵隊が八日から十八日までの日程で行っており、十六日には米海兵隊普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備されたオスプレイ二機が参加した。
訓練は、自衛隊と米軍の攻撃を受けた敵部隊の逃走経路上に、陸自と海兵隊の隊員をオスプレイで運び込む想定で行われた。
二十五日には高知県で実施される南海トラフ巨大地震を想定した日米共同防災訓練でも、オスプレイを使用する予定だという。
日米両政府には、オスプレイの訓練を沖縄県外で行うことで、県民の基地負担を軽減する姿勢を示し、普天間飛行場の名護市辺野古への「県内移設」に理解を得ようとの思惑があるのだろう。
日米安全保障条約が日本と周辺地域の平和と安全に必要だという前提に立てば、在日米軍基地の74%が集中する沖縄県民の基地負担を日本全国で分かち合うことは、負担軽減の一つの方法ではある。
しかし、計二十四機のオスプレイが普天間を拠点とすることに変わりはない。県外で訓練しても全体から見ればごく一部だ。参加機数も訓練日数も少なく、基地負担の抜本軽減にはつながるまい。
訓練の県外実施で、逆に飛行回数や騒音が増えるのなら本末転倒だ。普天間飛行場は県内でなく、国外・県外移設を提起すべきだ。
そもそもオスプレイは配備後も墜落事故を繰り返し、安全性が確立されたとは言いがたい機種だ。米国内では今年だけでも六月に機体が炎上、八月には着陸に失敗、炎上する事故が起きている。
今回の訓練で、滋賀県の嘉田由紀子知事は安全性への懸念から、市街地や琵琶湖上空を飛ばないよう求めたが、詳細な飛行ルートは明らかにされていない。米軍はこれまでも、安保条約と地位協定に基づいて日本側が提供した施設・区域や訓練空域以外でオスプレイの低空飛行訓練を行っていることが目撃されている。
安全性に懸念が残るオスプレイが日本の空を自由に飛び回る。沖縄県民の負担軽減につながることなく、その危険性だけが日本全国に拡散する。そのようなことが、認められようはずがない。
この記事を印刷する