中国:成長持ち直し 7〜9月期7.8% 先行き不透明
毎日新聞 2013年10月19日 東京朝刊
【北京・井出晋平、上海・隅俊之】中国国家統計局が18日発表した今年7〜9月期の国内総生産(GDP)は、物価上昇の影響を除いた実質で前年同期比7・8%増となり、前期(4〜6月期)の7・5%増を上回った。成長率が前期を上回ったのは3四半期ぶり。1〜9月期の実質成長率は7・7%となり、年間で政府目標(7・5%)を上回る見通しだ。ただ、足元は内外需とも力強さを欠く。経済構造改革を進める中国政府は規制緩和などで新たな成長を目指すが、経済の先行き不透明感はぬぐえない。
◇問われるリコノミクス
9月29日に開設された新たな経済成長モデルの実験場「上海自由貿易試験区」。中国政府は同試験区で保険やリース、ゲーム機の製造販売など6分野18業種に対する規制を緩和。外資による企業設立条件も緩め、人民元取引や金利の自由化も進める考え。
「企業登記を代行するよ」。試験区内の外高橋保税区に入ると、事業開始に必要な企業登記の代行業者がひっきりなしに声を掛けてくる。商機と見た企業や個人が試験区に殺到しており、上海紙・解放日報によると国慶節の連休明けの今月8日には、1日の登記数が577社と通常の20倍以上に達した。中国の企業関係者は「大きな変化が訪れる」と、中国経済の新成長センター誕生を期待する。
試験区は財政出動など景気刺激策に頼らず、規制緩和や対外開放で質の高い成長を目指す李克強首相の経済政策「李克強経済学」(リコノミクス)の目玉の一つ。李首相は試験区を「中国経済のグレードアップ版を作る布石」と意気込み、成果を将来、中国全土に広げたい考え。
ただ、実現には課題も多い。外資企業の設立条件緩和では、禁止・規制する項目を列挙しそれ以外は自由化する「ネガティブリスト方式」を採用したが、禁止・規制項目は190にのぼる。現行規制をなぞったものも多く、対外開放が看板倒れに終わる懸念もある。
中国紙によると、上海市が当初作成した規制緩和案が中央省庁から63カ所も修正され、先進的なサービス業への軽減税率適用など目玉政策も削られたという。中央省庁が権限縮小に抵抗した結果だが、中国での新たな成長モデル作りの難しさを示した。市場では「改革の本気度が疑われる」(日系アナリスト)と失望感も出ている。