みんなの○○:お米 炊飯 吸水は冷蔵庫で 仕上げに飯切りを
毎日新聞 2013年09月24日 東京朝刊
五ツ星お米マイスターの舩久保(ふなくぼ)正明さん(52)は「炊飯は調理です」と強調する。おいしく炊くには、下準備が肝心だ。
まずは米の研ぎ方。「研ぐ」といっても力を入れる必要はない。たっぷり水を張ったボウルの中に目が細かいザルを入れ、量った米を入れて手早く優しくかき混ぜたらサッと上げる。すすぎは軽く2〜3回。水が白く濁るのはでんぷんが溶け出しているだけなので、研ぎすぎると味が淡泊になったり米が割れたりしてしまう。長く乾燥すると米がひび割れてしまうので、水切りは5分以内で済ませよう。
逆に吸水はじっくり2〜3時間かける。時間をかけて芯まで吸水した米は栄養価も増し、冷めても硬くなりにくい。爪でつぶして粉状になれば十分に吸水した証しだ。
ポイントは水温。常温の水ではでんぷんが溶け出してしまう。冷やした水を使うか、水を張った内釜にラップをかけて冷蔵庫で吸水させるといい。同じ理由でタイマー炊飯するくらいなら、冷蔵庫で吸水させた米を高速炊飯する方がおいしく食べられる。水を張った状態でも冷蔵庫保存なら、半日から1日置いても大丈夫という。時間がない時は吸水しやすいようにお湯で研ぎ、冷たい水で炊飯するといい。
「一番大事なのは、炊きあがったら必ず飯切り(ほぐし)して余分な水分を飛ばすことです」と舩久保さん。しゃもじを釜の縁に沿わせてグルリと1周させ、ご飯を釜からはがす。次に釜の中央を十字に切り、1区画ごとに底から返すようにして全体を切るように手早くほぐす。高速炊飯の場合は10〜15分間蒸らしてから飯切りするといい。
ただ舩久保さんは「炊飯器は便利だが、じか火で炊くことも忘れないでほしい」と訴える。世界に米を食べる国はたくさんあるが、炊いて食べるのは日本だけ。江戸時代に庶民に広まった炊飯は、日本独自の食文化なのだ。「味に差がつかないと思いがちな炊飯だが、炊飯器によっても炊きあがりは異なる。じか火炊飯はなお奥が深い。いろいろ試しながら、家族の味を見つけてみては」【中村かさね】
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明日は「保存」です。